研究課題/領域番号 |
23520089
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
永澤 哲 京都文教大学, 総合社会学部, 准教授 (40388210)
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キーワード | チベット / インド / ネパール / ブータン |
研究概要 |
1、前年度の研究を踏まえ、ツボをめぐる『四部医典』の記述と実際のオイル・マッサージの臨床の異同について、文献研究、現地調査(チベット医学病院での臨床の参与観察、コンファランスへの参加、インタヴュー)の両面から明らかにし、また中国医学のツボとの関連について研究した。それによって、臨床では、『四部医典』にとどまらない多くのツボが用いられていること、またツボの効能が中国医学とは異なる例が多いことが明らかになった。これらについては、先行研究によって十分に明らかになっておらず、大きな成果だといえる。この点に関連して、後代の医学文献の研究に着手した。 2、チベット医学とアーユルヴェーダ医学の診断、治療法の異同について明らかにした。チベット医学では風の過剰に対する治療が最優先すること、その背景には、後期密教の意識・身体論があることを明らかにした。この点は、たいへん重要な成果だといえる(アーユルヴェーダ学会で発表済み)。 3、チベットに移植されたヤントラヨーガの中で最も古い「太陽と月の和合」に焦点を当てて研究した。その結果、①「太陽と月の和合」は、ハタヨーガおよび他のヤントラヨーガとの比較から、両者が分化する前の最も古い祖型を保つものと推測される。②ダンスと身体的ヨーガのあいだの連関、③ヤントラヨーガの三つの機能(悟り、健康法、治療法)とその背景にある意識論、医学理論、さらに聖者伝にみられる精神疾患の記述との関連を明らかにした。いずれも、まったく研究されたことがなく、たいへん大きな成果だといえる(その概要については、すでに論文としてまとめ、専門学術誌に掲載される予定である)。 4、ヤントラヨーガと連関する密教舞踏、脈管と風のヨーガについて、文献・現地調査をもとに論文をまとめた(前者は国際学術誌に掲載予定。後者は発表済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主題であるヤントラヨーガ、およびチベット医学のオイル・マッサージについて、文献および臨床の両面から、概要を明らかにするとともに、従来理解されていなかったポイントについて、新たな発見をすることができた。現地調査については、諸般の事情によって、調査地、時期などを一部変更したが、十分な成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
基本方針に大きな変更はない。文献・現地調査の両面から研究を推進する。調査地、時期については、現地の事情について最新の情報を集め、最大限の成果が得られるように、必要に応じて変更することがありうる。 最終年度にあたり、あらたな調査を踏まえつつ、研究の内容を報告書としてまとめ、印刷、刊行する。また、一般向けのチベット医学講習会をつうじて、社会への還元を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画から変更はない。旅費、資料、人件費が支出の中心となる。それにくわえ、報告書の印刷、送料に使用する。
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