最終年度にあたる今年度は、まずは研究成果の発表に力を入れてきた。まずは5月に、中国河北省社会科学院哲学研究所と河北省仏教協会の共催による「河北禅宗文化フォーラム」に参加し、本研究の成果の一部を発表した。また、10月に、台湾政治大学と法鼓山中華仏学研究所の共催による「漢伝仏教の超文化交流国際シンポジウム」、そして11月に、中国黄梅禅文化研究会主催による「黄梅禅宗文化フォーラム」にそれぞれ参加し、研究成果を発表してきた。 次は実地調査を実施した。まず日本国内では、4月に中世仏教と深い関わりを持つ東北地方にある山寺、中尊寺などへ出かけ、実地調査を行った。そして10月に青森県下北半島にある恐山を実地調査した。これらの寺院はいずれも入唐僧あるいは入宋僧と関わっているとされており、その現状を調査したのである。国外では7月に河北省柏林寺主催の「生活禅サマーキャンプ」に参加した。また、たまたま今年度は生活禅が提唱されてから20周年に当たる節目の年であるため、ついでにその記念行事にも参加した。そして11月に北京や武漢へ出かけ、関係の大学や研究機関にて文献調査を実施した。 以上のような研究活動を通して、いくつかの成果を得ることが出来た。研究成果が思うまま発表できたことは何よりの成果だったが、日本の東北地方における調査を通して、これまであまり注目されてこなかった東北仏教と宋との関わりが明らかとなり、今後の研究の進展に大きな手がかりを得ることが出来たという点である。さらに、現代中国における「生活禅」についてその活動の一端を実際に知ることが出来、これも今後の研究の進展に寄与することが大きいと考えられる。
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