16世紀初期から18世紀後半期、主としてカトリック修道会のイエズス会による東アジアの宣教運動は、神学思想とともに、ヨーロッパルネッサンス期の諸学芸をもらたした。それが図らずも、近世東アジアの日中朝の伝統社会における固有の知識体系ー知識構造・認識論・宇宙観並びに対外観ーが動揺され、当該地域に一種の新知識体系(「義理」から「物理」への転回)の発生を誘発した。当研究では、そうした歴史的事象を、思想的連鎖という視点に立って、一方では、イエズス会の教育理念とその実践活動への考察、他方では、徐光啓、新井白石および洪大容という当時の代表的知識人の知識構造とその変容への検証によって明らかにするものである。
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