本研究の最終年度において、これまでに明らかになった問題を検討するとともに、全体の研究成果をまとめ、2013年10月にオーストラリアで開かれた初期キリスト教研究学会で発表した。そして、2014年3月に冊子体報告書を刊行するとともに、海外研究協力者との共同討議をおこなった。 研究代表者・上村は、2013年5月アメリカの北米教父学会において、対話篇という文学形式について検討し、アウグスティヌスをとりまく共同体における教育のあり方を考察し、つづく6月のカナダでの教父学会において、初期の覚え書きといわれる論考のなかに、すでに枢要な問題の布置が設定されていることを明らかにした。 上村と研究分担者・佐藤(10月から、研究協力者に変更)はともに、10月にオーストラリア・メルボルンで開かれた初期キリスト教研究学会において、これまでに明らかにされたアウグスティヌスの「創世記」解釈とパウロ書簡解釈の実態、また、それぞれの解釈を支えたアウグスティヌスの人間論、言語理論といった思想のプロセスについて論ずる研究発表をおこなった。佐藤はとりわけ、「創世記」解釈を初期の註解において救済論的な視点から考察し、上村は、主著『告白』におけるアウグスティヌスのパウロ書簡との出会いの意義を考察した。 両者はこの発表をふまえ、11月以降、英文研究報告書を刊行すべくその準備に着手し、これまでの研究発表を再考し、その内容を必要に応じて加筆、修正した。2014年3月には報告書を刊行するとともに、オーストラリア・ブリスベンで開かれた共同研究集会に代表者・上村が出席し、その概要を紹介した。とくに研究の成果とその意義を論じた報告書「序論」をとりあげ、海外研究協力者をまじえた議論のなかで、研究をさらに展開する可能性について検討した。
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