研究課題/領域番号 |
23520101
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30207980)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ニュートン主義 / 啓蒙 / 18世紀 / 科学史 / 社会科学史 |
研究概要 |
本研究は科学史、18世紀思想史にかかわる近年の動向と、申請者が行ってきたイギリス・ニュートン主義の研究、および手稿類を含めた校訂版全集が刊行されてようやく全貌が明らかになりつつあるトマス・リードの研究を踏まえ、17世紀の近代科学のプロジェクトを、自然という書物を解読する試みととらえ、そこから啓蒙期の人間・社会観とその学(「人間の科学」)が生まれる過程を、主に18世紀イギリス思想史の研究によって明らかにする。これを踏まえて初期近代の「迷宮」としての自然の表象が、19世紀にいたって透過的な「人間的自然」へと変化し、それが20世紀の人間中心主義の形成へと導いたことを解明する。資料研究としては、各地文書館が所蔵する草稿研究と文献電子データ・ベースの活用を結びつけた、新しい思想史の手法の開発を目指す。 本年度では上記の課題を、以下の諸点の解明を通じて行った。(1)近代科学における迷宮としての自然(2)自然という書物の解釈学 その結果、(1)トマス・リードを手がかりに、迷宮としての自然のイメージが18世紀においても持続していることを明確にし、それとの関連で経験主義的なニュートン主義の展開を展望することができた。(2)については、書物の解釈学という視点から近代における人間の科学の成立を解明する手がかりを得た。とくにトマス・ホッブズとアダム・スミスの修辞学について、その重要性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画のうち、23年度に予定した研究を完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度計画の成果の全体はまだ公表していないため、今後24年度計画の遂行と平行して発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画通りに、以下の24年度の計画を遂行し、それに即して研究費を使用する。(3)「精神の科学」と普遍的命令文の生成(4)二つの秩序(3)、(4)については、ホッブズ、ロック以来の18世紀の「人間の科学」の諸体系を分析するとともに、スミスとA・ファーガスンを比較する。ファーガスンは人間の意欲こそが文明社会の興隆と衰退の原因であると考え、古代社会と近代商業社会を対比したが、このような人間の創発的、道徳的行為能力に基づく道徳的秩序の観念は、スミスのような自然的秩序の主唱者たちが看過していたものではない。むしろ彼らが時折見せる進歩に対する悲観的な視線は、道徳的秩序に対する考慮が原因だとも見ることができる。本年度はスコットランド哲学研究センターでの調査を中心とする。そのため合衆国プリンストン神学校に客員研究員として滞在し、合衆国でアクセスできる初期近代から現代にいたる電子データ・ベースの検索、および近代科学史と合衆国におけるスコットランド哲学の展開に関する一次資料を収集する。同センターで開催される国際リード・シンポジウムに参加して研究成果を報告するとともに、海外の主要な研究者と研究交流を行う(以上計4週間、外国旅費および消耗品費)。収集したマニュスクリプト資料については読み取り、入力を行う(研究補助:のべ7時間×20日)。国内では早稲田大学、京都大学、国立国会図書館で電子データ・ベースの調査を行う。(国内旅費)。刊本資料については、啓蒙時代の「人間の科学」関係図書に関する刊本資料および研究書の収集を行う(備品費)。
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