研究課題/領域番号 |
23520101
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30207980)
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キーワード | 社会思想 / 科学史 / ニュートン主義 / 啓蒙 / アダム・スミス / 科学思想 / 経済学史 / イギリス |
研究概要 |
本年度は以下の2点を解明した。 (1)「精神の科学」と普遍的命令文の生成 科学の対象を自然から「人間的自然」へ変え、科学の方法によって「人間的自然」の解釈体系を建設すれば、対他者、対自己的行為を志向する、普遍的妥当性を持つ命題が得られることになる。そこからニュートンが『光学』で主張した、科学の方法による「道徳哲学の刷新」という展望が開かれる。ここに人間に関する科学的知が人間の道徳的進歩をもたらすという、啓蒙のプロジェクトの正当性があった。この「人間の科学」を創成したプロジェクトの根底にあったのは、自然と人間を結びつける存在論的な理性概念だった。以上により、18世紀研究の積年の課題だった、啓蒙の社会・政治・経済思想におけるニュートン的科学の意味を解明する展望を示した。 (2)二つの秩序 このような人間的自然の言説が記述した秩序には相互に対立しあう以下の2類型があり、この対立は現代の社会科学にまで受け継がれている。 (a)自生的秩序:A・スミスの体系は重力の法則のように、人間の意志の在り様と無関係に自生的に生成し、貫徹する秩序の像を提示した。こ(b)創発的秩序:以上の二種類の自生的、自然的秩序に対立したのは、自由意思を持つ人間の意志、知性、意欲、情念という非決定論的要素が作り出す、道徳的、社会的秩序だった。このような定式化によって、科学の影響という文脈の中で、啓蒙以後のさまざまな社会・政治・経済理論への展開を説明する道筋を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの成果をまとめ、平成24年度科学研究費公開促進費による出版『ニュートン的モーメント』に盛り込むべく、執筆を進行させている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は(1)自己中心性と表象の世界の成立を以下の点の検討によって解明するとともに、全体の総括を行う。 ・W・ヒューウェル、G・F・W・ヘーゲル、L・フォイエルバッハたちの複数性論批判・古典派経済学と限界効用学派を中心とした、19世紀の社会科学体系の行為理論の分析・18世紀後半からの数理的物理学の発展・19世紀における社会的言説の変化・20世紀社会科学の合理性観念
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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