本研究における比較分析を通じて、近代日本・中国の「哲学」成立期の特徴について、主に以下の点が明らかにされた。明治維新前後の時期を除き、近代日本の初期の「哲学」は形而上学をベースとしたドイツ系哲学が主流であり、中国やインドなどの「東洋哲学」の思想史分析においても、その学問分類の枠組を「所与」のものとして当てはめて叙述する傾向が強い。それに対して、近代中国の場合、西洋思想導入当初より、進化論が圧倒的な影響力を持つとともに、「哲学」的な機能を果たしたために、「形而上学」への関心は薄かった。さらに、「知識」を重視する西洋の「哲学」と中国の知的伝統との異質性を指摘する議論も少なくない。
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