研究課題/領域番号 |
23520107
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
葛西 弘隆 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (70328037)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 アメリカ |
研究概要 |
本年度は花森安治にかんする基礎資料の収集と、とくに戦時期から戦後初期にかけての彼の活動や思想的背景についての調査研究を中心とすることを意図していた。おりしも2011年が花森安治の生誕100周年にあたったこともあり、基本資料の収集は順調に進んだ。 思想史研究の面では、J・ヴィクター・コシュマン『戦後日本の民主主義革命と主体性』(平凡社)を翻訳・刊行し、1940年代の思想史における民主主義と主体性をめぐる問題について、国際的な研究の進展をふまえた議論を日本の読者に提供・紹介した。また、10月にはアメリカ・コーネル大学アジア学部における「日本思想史を書き直す」国際会議に参加し、上記コシュマンの著作とその日本語訳が、今日の社会科学、歴史学、思想史、地域研究においてどのように読まれるべきかをめぐって報告と討論を行った。 さらに、2012年3月には、コーネル大学およびドイツ・ライプチヒ大学の日本研究者との国際共同研究プロジェクトの新たな構築の可能性について関係者と協議し、明るい見通しを得ることができた。また、同月カナダのトロントで開催されたAssociation for Asian Studiesの年次大会において、戦時期の自由主義を主題とするパネルにディスカッサントとして登壇し、今日の歴史研究、日本研究、思想史研究において、戦時と戦後をつらぬく植民地主義という問題枠組みにおいて戦時期の自由主義が議論される新たな段階に入っていることを提起した。 上記共同研究との関連で、ギャヴィン・ウォーカー『現代資本主義における「民族問題」の回帰──ポストコロニアル研究の新たな政治的動向』を翻訳した(『思想』(岩波書店)に発表予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の大きな目標であった基礎資料の収集についてはおおむね順調に進展した。現在、テクストの検討を進めており、2012年度の作業のなかで、論点をより詳細に検討していく計画である。 思想史研究への貢献という点では、複数回にわたる渡米の機会をつうじて、多くの研究者との交流(研究発表・討議)を進めることができた。2012年度以降、戦時期・戦後思想史についての新たな研究の可能性と人的ネットワークを構築するための重要な基盤が構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果をもとに、花森のテクストの詳細な検討を行う。とりわけ今年度は、花森が携わった『暮しの手帖』の分析を進めることになる。戦後思想史における文化活動の政治的可能性を、とくに雑誌という媒体、ジェンダーという視点に注目しながら進める。 また、思想史の方法論という点からは、これも2011年度に構築したアメリカ、ドイツの日本思想史研究者とのネットワークを発展的に展開し、花森の思想史的読解を、より大きな戦後思想史の読み直しの理論的文脈のなかに位置づけることを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として、花森安治と『暮しの手帖』関連資料、思想史・文化史関連資料の収集と整理、分析に関わる物品、国内外での調査や学会/研究界報告のための出張旅費が必要となる。
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