雑誌『暮しの手帖』の編集者として知られる花森安治(1911-1978)は、社会批評を手がける優れたジャーナリストかつ思想家でもあった。日常生活のなかにはたらく政治に着目し、食、衣裳、住居、職業など市民の生活に密着した多様な主題を扱うことをつうじて、戦争、国家、資本主義、公害といった同時代の社会問題にもつながる政治社会への関心を喚起した。花森の思想を、「暮し」の概念をつうじて政治的なものと文化的なものを独自の形式で接合し、合理的で自律した政治的主体の確立を目指す民主主義実践として読むことができることを明らかにした。
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