本研究は、19世紀末近代ドイツに成立したユダヤ学に「祭司」と「預言者」を対立させるパラダイムがあり、その根幹には「預言者」偏重主義が近現代思想にあったのではないかという問題意識の下、ユダヤ教文献の中での「預言者」「祭司」についての言説を収集し分析し、ユダヤ学的なとらえ方と実態の違いを比べた。研究の結果、第一に、ラビ・ユダヤ教文献では、預言への関心は副次的なものであり、彼らの主眼は祭司的な事柄にあることが統計的に示された。ラビたち自身は、祭司の後者として自己認識している。第二に、13世紀以降中世時代のユダヤ思想の中で預言的なものへの価値が高まっていることが窺える。ユダヤ学が彼らの基盤としたラビ・ユダヤ教をとらえる視点は必ずしも実態をとらえているとは言えないことが示された。
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