研究課題/領域番号 |
23520112
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
水嶋 一憲 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (20319578)
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キーワード | 情動 / 〈帝国〉 / グローバル化 / メディア文化 / コモン |
研究概要 |
本研究は、今日のグローバル資本主義の新たな展開の中で情動が果たす大きな役割に対して、帝国論の新展開と情動論的転回という交差する視座から接近を試みるものである。 かかる目的を達成するために、平成25年度には、共著書として『アフター・テレビジョン・スタディーズ』(せりか書房)[担当部分]「ネットワーク文化の政治経済学:ポストメディア時代の〈共〉(コモン)のエコロジーに向けて」、論文として「そこに一緒に存在すること:ポストメディア時代の政治的情動と一般的感情」(『現代思想』、41巻9号<特集 ネグリ+ハート>、青土社、156-169頁)と「転位しつづけるプロジェクトのために:スチュアート・ホールの闘いの遺産」(『思想』、No.1081、岩波書店、61-65頁)を出版した。また、学会/シンポジウム報告として、多文化メディア市民研究会主催のトークセッション「情動と暴力、そして文化」にて招待講演「ポストメディア時代の政治的情動をめぐって」(於 東京藝術大学、平成25年6月)、早稲田大学メディア・シティズンシップ研究所主催のトークセッション「身体、暴力、文化を問いなおす」にて招待講演「<暴動の政治文化>と<新たな政治的情動>の可能性」(於 早稲田大学、同7月)、第3回複雑系科学シンポジウムにて学会報告「情動とソーシャル・メディア」(於 大阪大学、同9月)、筑波大学人文社会系主催の招待講義「<帝国>時代のコモンとコミュニケーション」(於 筑波大学)を行い、ハーヴァード大学ライシャワー日本研究所主催の国際ワークショップ<Media Theory in Japan>における報告[Yuriko Furuhata,“Arata Isozaki and Architecture’s impact on Media Theoty” ]のディスカッサントの役割を務めた(於 ハーヴァード大学、同11月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主題である、帝国論の新展開と情動論的転回にとっての理論的基盤をなす、アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの共著『コモンウェルス』の訳書に加えて、彼らの新著『叛逆』の日本語版を、平成24年度に出版することができた。それを承けて平成25年度には、関連論文を2本執筆した上に、学会/国際シンポジウム等で関連報告を計5回行うことができた。 これら基本文献の翻訳を踏まえた論文公表と学会報告を通じて、本研究の最終年度における取りまとめ作業のための土台が整備されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに構築・整備することのできた土台をもとに、最終年度にあたる平成26年度においては、単著の刊行に向けた研究テーマの整理と原稿の執筆を進めながら、学会/シンポジウムでの報告やEUやアジアでの研究調査等を通じて、多様な分野の研究者たちとの国際的な交流を深め、そこで得られた知見を本研究のエラボレーションに向けて活用してゆきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度後期の半年間、アメリカ合衆国・ハーヴァード大学に客員研究員として所属した。その間、文献資料等の消耗品の購入を科研費で賄うことが、手続き上、困難な状況に置かれるとともに、合衆国外のEUやアジアでの研究調査を実施することが難しい状況にあった。かかる状況において、次年度使用額が生じた。 次年度使用額のうち、新たな研究書が続々と出版されている本研究テーマに関する文献資料等の消耗品の購入に15万円程度を充て、EUやアジアでの研究調査用の旅費として35万円程度を充てることにしたい。
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