本研究は、今日のグローバル資本主義の新たな展開の中で情動が果たす大きな役割、いいかえれば、情動のポリティクスとエコノミーに対して、(a)アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの<帝国>三部作を中心とする帝国論の新展開、(b)近年の人文・社会諸科学における情動論的転回という交差する視座から接近を試みようとするものである。 このような目的を達成するために、平成26年度には、共著書として『産研叢書38 プロジェクト研究<福祉・人権概念の転回と歴史認識の転換>』(大阪産業大学産業研究所)[担当部分]「〈帝国〉とソーシャル・メディア時代の政治的情動」、『よくわかるメディア・スタディーズ 第2版』(ミネルヴァ書房)[担当部分]「ネットワーク社会の政治経済学」と「ソーシャル・メディアによるランキング機能」、『よくわかる社会情報学』(ミネルヴァ書房)[担当部分]「情報資本主義」の3冊を、論文として「加速と隷属:機械状資本論ノート」(『現代思想』、第43巻第9号、青土社、印刷中)を、それぞれ出版した。また、DMN(デジタル・メディア時代の政治的公共性とナショナリズム)研究会[日本学術振興会科学研究費補助金基盤(B)]主催の公開シンポジウムで報告「制御と隷属:<現代の政治的公共空間を捉え返すあらたな視点>のために』を行なった(於 大阪産業大学・梅田サテライトキャンパス、平成26年10月)。併せて、平成27年1月27日より2月4日までドイツ・ベルリン市に滞在し、「世界文化の家」で開催されていたTransmediale/festival 2015に参加し、世界中から集まった気鋭のメディア研究者たちと対話を繰り返しながら、「コミュニケーション資本主義」(ジョディ・ディーン)による情動の捕獲のメカニズムの解析と、「帝国論の新展開と情動論的転回」をテーマとする本研究の成果を拡大・深化させることに取り組んだ。
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