研究課題/領域番号 |
23520113
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
吉田 洋一 久留米大学, 文学部, 准教授 (90441716)
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研究分担者 |
島 善高 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60187424)
大島 明秀 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (50508786)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 北部九州地方 / 儒学思想 / 筑前亀井家 / 肥前 / 肥後 / 豊前 / 豊後 |
研究概要 |
(研究代表者・吉田)江戸時代中期に北部九州地方で活躍した亀井南冥(1743―1814)を中心に、「筑前亀井家」の全容解明を行うことは、北部九州地方における儒学思想が、近世から近代へ連続する過程を検証することができる。このことを念頭に置き、平成23年度は関連史料の調査を行った。主な調査の内容は、(1)(財)亀陽文庫・能古博物館(福岡市西区)の調査、(2)長崎歴史文化博物館(長崎市)所蔵頴原家関係資料調査、(3)久留米市民図書館(福岡県久留米市)所蔵和漢書調査の3点である。(1)は亀井南冥・昭陽関連史料約500点(典籍類含む)の悉皆調査(次年度も継続)、(2)は亀井家の門人で、五島(現長崎県五島市)にて医業に従事した頴原家関係資料(約50点)の調査、(3)は和漢書のうち、久留米有馬藩旧蔵(約15000冊)の概要調査である。特に(3)は次年度以降亀井家関連資料の抽出を行う予定である。(研究分担者・島)熊本藩校時習館の訓導であった木下犀潭(1805~1867)は、江戸で佐藤一斎、松崎慊堂に学び、塩谷宕陰、安井息軒、山田方谷、佐久間象山らと交流、帰藩後は、自身の私塾で全国各地から集まった多数の書生を教育した。2011年秋、木下犀潭の子孫宅に保存されていた犀潭の日記を始め、関連史料を総て写真撮影し、その解読に取り掛かった。(研究分担者・大島)近世肥後の儒医・村井琴山とその背景について、京都大学、大阪府立中之島図書館等で調査を行った。調査、ならびに複写や購入等で史料収集を行った成果をもとに、現在、琴山の宗教観、博物観、医学観等について分析を進めている。また、藩校時習館で訓導を務めた儒者・辛嶋蘭軒とその背景について、熊本県文化企画課松橋収蔵庫で2度にわたって調査を行った。調査、ならびに複写や購入等で史料収集を行った成果をもとに、現在、辛嶋蘭軒についての連名論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関連施設の調査により、未確認の資料が抽出できる可能性がある。例えば、福岡県久留米市民図書館所蔵資料は、亀井家の学統(門人)と考えられる樺島石梁(1754―1828)は久留米藩校・明善堂設立に尽力した人物であるが、現在まで詳細な検証がなされておらず、今後の調査の進展が期待される。 本研究は、北部九州地方の近代化の諸相を解明することが主目的であるので、筑前地域だけでなく、亀井家との交友関係が密である近隣地域(筑後、豊前、肥前、肥後など)も調査対象とすることが必要不可欠である。23年度の調査に関する反省点は、「亀井家周辺」とその後継に関する事例をどの程度まで取り上げるかということの判断が困難であったことがあげられる。新出及び既存資料の状況を、効率よく研究成果に反映させる必要があろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、23年度から継続中の調査に加え、以下の調査を行う。(1)九州大学附属図書館所蔵「島田家資料」―南冥と交流を持つ徳山藩の儒僧・島田藍泉(1751~1809)の史料群。そのうち南冥・昭陽関連書簡は約50点確認されている。さらに島田藍泉関連資料は徳山市立図書館と京都大学附属図書館に分置されており、進捗状況に応じてこの2館に関しても調査を行う。(2)九州大学附属図書館所蔵「竹田文庫」―貝原益軒の高弟であり代々福岡藩儒として仕えた竹田家(初代・定直)歴代の記録・書簡類。竹田家の資料は当館・福岡県立図書館・福岡県立修猷館高等学校・竹田家御子孫宅に分置されており、総計約5000点。個人蔵以外は目録化されており、亀井家関連資料の検索及び調査が作業の中心となる。(3)慶應義塾大学附属図書館所蔵「斯道文庫」(「亀井家学文庫」)―南冥・昭陽父子の自筆稿本・蔵書類約370点の資料群。目録は阿部隆一「亀井南冥昭陽著作書誌」がある。医学関連書冊の確認調査。(4)稲村三伯関連資料調査―稲村三伯(1758~1811)は江戸時代の蘭学者で、蘭日辞典『江戸ハルマ』の編纂で著名。安永五年(1776)に南冥に従学している。三伯の出生地である現鳥取県の予備調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度分の申請は、直接経費900,000円(内訳:吉田600,000円、島200,000円、大島100,000円)であったが、23年度残高を加え直接経費975,716円となったので、24年度の研究費配分は、研究代表者575,716円、研究分担者1(島)200,000円、研究分担者2(大島)200,000円としたい。
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