本研究は主に13・14世紀のイタリアにおけるフランシスコ会の美術を対象とし、創立から間もないこの修道会の穏健派と厳格派・聖霊派の対立を視野に入れながら作品を考察するものである。後者の思想は強く終末論的な色合いを帯び、「最後の審判」や「天上の栄光」あるいはフランシスコ会士の宣教や殉教の場面などに影響を与えたと考えられる。一方、絵画が公の場に置かれているかぎり、教会の正統的な教義をも反映しているはずである。アッシジ、シエナ、ナポリ、パドヴァ、フィデンツァに残される作品を、この二つの側面から解明した。
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