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2012 年度 実施状況報告書

知恩院蔵阿弥陀二十五菩薩来迎図の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520115
研究機関弘前大学

研究代表者

須藤 弘敏  弘前大学, 人文学部, 教授 (70124592)

キーワード国際情報交換
研究概要

1 阿弥陀来迎図の作例について、平安時代から鎌倉時代までのほとんどおよび南北朝時代以降の一部を含めて、その図様とデータについて総覧的な検討を行い、日本における阿弥陀来迎図の展開をあらためて精査した。その結果、来迎図の展開には軸となる形式が複数存在したことと、一見気づかれないが実際は強い規範性があって宗派や地域時代を通してそれによる拘束があったことを確認した。日本未紹介のチェコ所在の来迎図およびパリの仏画作例の調査では大いに知見を得られた。
2 12世紀から14世紀前半にかけての絵画作例を仏画世俗画を問わず、多数デジタルデータ化を行い、宗教絵画における自然表現の諸相を詳細に検討した。その結果、知恩院本の持つ性格がどこに由来するのかが明確になって来た。また、その作業過程で樹木や草花および滝や山崖の表現に定型的な傾向が明らかに存在することと、抽象的な宗教空間と現実の山水風景との重ね合わせに中世日本の顕著な傾向がうかがえることも確認できた。
3 知恩院本の背景となる場所について、旧来からその候補地として指摘されていた嵯峨嵐山に赴いて終日詳しく実見し、景観と位置、方位と天体の運行との関わり、歴代上皇の御陵と嵐山また愛宕山の関係について点検し、地図上の知見と実際の景観の相違についてほぼ理解を得た。
4 昨年度の研究から得た、知恩院本が山越阿弥陀図と深い関わりを持つことについて、さらに他作例との比較および知恩院本の画面分析を進め、ほぼ結論に至る見解を得るに至った。彼岸に見立てられる春の山と初夏と春を重ねて描かれた此岸の情景との間の齟齬をどう理解するかについて、ほぼ理解は得られたが、この点を最終年度の課題の一つとして継続して検討していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究対象の作品と比較すべき作例の調査が一部遅れているが、研究計画に従った進行の通りで、最終的な考察の段階に至りつつある。

今後の研究の推進方策

実地検分が必要な景観があと二箇所残っており、それをまず果たした上で現実の景観と理想的な往生空間の関係に関する課題を果たしたい。さらに、「山越え」「山越し」論争について再度精査し、山越え阿弥陀来迎図としての知恩院本の位置づけを行う。
これまでの研究を踏まえて、画像の分析と資史料分析の結果を総合して、本来迎図の成立の機縁を明らかにする。さらに、鎌倉時代における阿弥陀来迎図の性格を単に浄土宗勃興などの理由で解釈するのではなく、当代の自然観や浄土信仰の複雑な重なりとして把握するよう努める。

次年度の研究費の使用計画

当初予定していた実地調査および作品調査の一部が、私事(実父の罹病および死亡)のため実施できなかった。これにより主に旅費で残予算が生じることとなった。
25年度に残予算の過半を24年度未実施となった実地及び作品調査のための旅費にさく。ほかはプリンタ関連経費と報告書作成費用が主たるものである。

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公開日: 2014-07-24  

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