研究実績の概要 |
平成27年度は本研究の最終年度として、過去4年間に未遂行であった部分を補い、研究成果の公表/公刊に向けてまとめと整理の段階に入るよう努めた。特に夏期休暇を利用してイギリス、フランスの美術館や研究施設を廻り、本研究テーマを現代美術の動向とリンクさせる上での重要な事例(Agnes Martinの回顧展、Richard Longの場所特定的展示、Mona Hatoumの特別企画展等々)の調査に益するところが大きかった。 平成26年度末に立ち上げた研究会の公開シンポジウム(「musica mundana/気の宇宙論・身体論」)後の新たな展開として、20世紀初頭以来の美術のなかで「音」「響き」「エネルギー」を重要な構成要素とする事例の研究(Douglas Kahn, Earth Sound Earth Signal, 2013)や「音の環境学」(大橋力)といったアプローチを参照しつつ、本研究のテーマ「空間調整術としてのアート」を「エネルギー・アート」やサウンド・スケープ、さらに広く環境芸術と心身変容技法(鎌田東二)の問題とも絡めて論ずる方向が明らかとなった。 さらに、1960年代という現代アート成立期に分野を越えて多方面に影響を与えたダンスやパフォーマンス(ケージ、カニンガム、ジャドソン・グループ)の「空間調整術」(ないしエネルギー調整法)的なアスペクトの考察を併せて行い、作品よりプロセスを重視する現代アートの傾向を本研究テーマの延長のなかで吟味する足場を得た。 データ・ベースの作成に関しては特に映像資料の電子データ化を集中して行い、アーカイヴ作成に着手することができた(現在も継続中)。 本研究の成果の一部をアンソロジーの形で出版する計画に着手し、執筆者への依頼、全体の構成、出版社の確定を進めている。
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