研究課題/領域番号 |
23520118
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研究機関 | 愛知産業大学 |
研究代表者 |
杉山 奈生子 愛知産業大学, その他の研究科, 准教授 (30547493)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 美術史 / アントワーヌ・ヴァトー / 雅宴画 / 彫刻 / 18世紀 / フランス / 美術理論 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究は、従来アプローチの難しかったヴァトーの雅宴画解釈を、作品自体とともに作品をとりまく文化的・社会的コンテクストからの資料を用いて試みるものである。具体的には、ロココ美術の創始者とも称される、18世紀フランスを代表する画家ジャン=アントワーヌ・ヴァトー(1684-1721)が創始した絵画ジャンル、雅宴画の中に描かれた彫刻モティーフに対する意図を、制作者であるヴァトーおよび受容者である当時の美術愛好家に関する資料などから浮き彫りにし、美術が公的なプロパガンダとしての役割から私的な鑑賞のための役割へと変容しつつあった、18世紀フランス美術史・文化史の一端を明らかにするものである。 研究方法として、(1)ヴァトー自身に関するテクスト(油彩画・素描・文字資料)に関わるデータの再検討、(2)ヴァトーの描いた彫刻表現をとりまくコンテクスト、18世紀フランスの美術史・文化史の把握、(3)ヴァトーの彫刻表現の生成過程に関わる、ピュグマリオン神話や古代彫刻、庭園や演劇を主題とした画像(油彩画・版画)のデータ収集・分析を計画した。 当該年度(平成23年度)においては、上記の研究目的および計画に則り、主に研究方法(2)について実施した。ヴァトーの彫刻表現を取り巻くコンテクスト、つまり、18世紀初頭フランスの社会的・文化的背景(美術理論、美術愛好家、サロン文化など)について、18世紀初頭のサロン文化や美術受容などに関する文献を精読し、文化史・社会史的な状況の把握に努めた。また、美術理論については、生きているかのような人体を表象する上で、硬い骨ではなく柔らかな肉の表現が重視された言説(ドルチェの理論など)に着目し、関連する記述を美術理論書(主にルネサンス、17,18世紀のイタリアやフランス)から洗い出し、柔らかな肉についての理論とヴァトーの生きているかのような裸体彫刻との相関関係を検討し、論文として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における初年度として、申請計画に従い、予定項目をほぼ遂行した。ただし、平成23年夏に予定していた海外調査を震災の影響で見合わせたため、上記の達成度となった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「9.研究実績の概要」に示した研究方法(1)(2)(3)に関して、平成23年度は(2)を中心に実行したので、今後は、(2)を継続発展させるとともに、(1)(3)を重点的に実施したい。 研究方法(1)(ヴァトー自身に関するテクスト(油彩画・素描・文字資料)に関わるデータの再検討)については、作品目録とともに、作品の所蔵先であるルーヴル美術館などの現地での調査を行う。研究方法(3)(ヴァトーの彫刻表現の生成過程に関わる、ピュグマリオン神話や古代彫刻、庭園や演劇を主題とした画像(油彩画・版画)のデータ収集・分析)については、関連資料をパリのフランス国立図書館などで調査・分析するとともに、古代やルネサンス以降の絵画・彫刻を、CD-ROM、作品目録および欧米の主要美術館での調査を行い、ヴァトーの視覚的着想源、つまり彫刻表現の典拠を明らかにする。 文献の精読および現地調査で収集した資料をもとに分析を行い、研究成果を論文やデータベースとして公表していきたい。完成されたデータベースについては、ホームページで公開し、専門家に限らず広く利用できるようにし、さらに写真なども含めて何らかの印刷物に付したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
18世紀フランスの美術・文化に関する文献資料の収集および、海外(フランス)・国内調査を実施する。これらの調査結果をデータベース化して、ホームページ(新規開設の準備中)において随時公開する。
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