研究課題/領域番号 |
23520120
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 裕成 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00243741)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ラテンアメリカ / アンデス / メキシコ / 美術 / 他者表象 |
研究概要 |
本研究は、スペイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにしようとするものである。 この目的に基づき、本年度は10月にメキシコに出張し、1)国立文書館、国立人類学博物館文書館において、植民地先住民の紋章図像に関する史料調査、2)国立図書館、メキシコ国立自治大学美術研究所図書館などにおいて植民地美術に関する資料調査、3)イスミキルパン、アクトパン、クアウティンチャン、テカマチャルコなどにおいて宣教修道院の美術装飾に関する実地調査をおこなった。また、12月にロサンゼルスに出張し、ロサンゼルス郡立美術館において開催されたラテンアメリカ植民地美術に関する展覧会および国際シンポジウムにおいて、情報収集と研究打合せをおこなった。さらに、これらの調査成果に加え、継続的に関連資料の入手にも務め、新大陸植民地に関わる図像文化における他者像の類型・系譜とその社会的機能の系統的分析を進めた。 その結果、1)1538年にメキシコ市において、宣教師と先住民首長の協力関係に基づいて制作された《聖グレゴリウスのミサ》の羽根モザイク聖画が、当時ヨーロッパで論争となっていた「先住民の理性」に関する解釈において、先住民の立場を擁護するイメージ操作の一環をなしていたこと、2)そのイメージ操作が、征服後の先住民が積極的に乗り出した紋章の獲得と、その図像による自己像の構築と軌を一にすること、さらに、3)こうした先住民の関与する美術の中核に、イスミキルパンなどの宣教修道院の壁画装飾図像が位置することを明らかにした。 これらは近年の植民地美術研究における、先住民の関与についての認識の深まりを踏まえるとともに、そこに新たな事例を通しての論証を加えるものである。この点において大きな意義があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、スペイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにすると同時に、「発見」された他者の像として、あるいは、征服者側から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明しようとするものである。 本年はこのうち特に、16世紀メキシコ(ヌエバ・エスパーニャ副王領)の事例について、計画した実地調査に基づいて研究を進め、当初想定した程度の成果を挙げることが出来た。また、その成果を1編の比較的分量のある論文(24000字程度)にまとめ、公刊することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に継続して、ヨーロッパおよびラテンアメリカ各地の文書館、図書館、および作品所在地における実地調査を中心に、関連する文献資料などの継続的な入手もおこないながら、研究を進める。 1)新大陸の先住民像の類型と系譜を系統的に明らかにsするとともに、2)「発見」された他者の像として、あるいは、征服者側から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に予定していたスペイン調査は、これに先立っておこなう必要が生じたロサンゼルス郡立美術館への出張をおこなったために取りやめ、若干の未使用額が生じた。ロサンゼルスにおいては、国際シンポジウムにおいて、とりわけデラウェア大学准教授マリア・トーレス・ゴメスとの情報交換により、スペイン調査に必要な重要な知見を得たので、24年度にこれを実施したい。 本年度はこのスペイン調査を中心に海外での実地調査をおこなう。また、必要な調査機材と関連資料の購入をおこなう。
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