研究課題
本研究は、スペイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜、社会的機能を明らかにしようとするものである。この目的にもとづき、本年度は、クラクフ(ポーランド)およびマドリード(スペイン)に出張し、史資料調査をおこなった。クラクフでは、ヤギロン大学図書館において、アルベルト・エクハウトの手になるブラジル先住民に関する未公刊素描の調査をおこなった。その詳細な分析を通し、「民族誌的素描」ともよばれるこのイメージ群が、対象の精密な観察に基づく写実的描写に基づく一方、類型的な他者像の図像要素を織り込んでいる点を明らかにした。またマドリードでは、前年度に引き続き、新大陸の先住民首長の紋章についての調査をおこない、その図像に、スペイン本国において類型化された新大陸と先住民のイメージが取り入れられていくプロセスをつぶさに検証した。以上の最終年度の調査結果も含め、本研究は、当初の計画の通り、ヨーロッパおよび新大陸において征服以降形成された先住民像について、アステカ、インカの君主像、首長像、戦士像を中心として、画像資料の包括的な収集整理を完了した。また、その図像群の制作と受容に関する情報の収集を通して、それらが、ヨーロッパ側・先住民側双方の相互作用のもとで形成されたことを解明した。先住民首長の紋章図像が示すのは、彼ら被征服者エリートが、征服者の側によって「他者像」としてつくり出された先住民イメージを積極的に受け入れ、みずからの社会的生存を図ったことである。たほう、征服者の側は、先住民君主の像を操作することで、征服以前の歴史を征服後の統治と接続しようとした。これらの研究成果は、大航海時代後の「越境する美術」の重要な社会的機能を明らかにする点で大きな意義があると考える。
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The Atlas of Site-specific Art: North and South America (Phaidon Press, London)
巻: 巻号なし ページ: 332-333
エル・グレコ再考 1541―2014年 研究の現状と諸問題(国際シンポジウム議事録)
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形
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