今後の研究の推進方策 |
引き続きクロード・カーンの領域横断的な活動を多角的に捉える作業と、カーンと他の作家たちとの影響関係の検証を軸に研究を進め、総括する。 パリ時代のカーンの活動とシュルレアリスムとの影響関係について現地調査を続けるとともに、フランスのカーン研究者と研究交流を行う。とくにセルフポートレート写真での異性装やパフォーマンス性に加えて、鏡や二重露光等による自己像の「多重化」や「歪曲化」、仮面や人形を用いた身体感覚の「異化」という問題を浮き彫りにしていく。またフォトモンタージュにおける身体の「断片化」と結合の手法、それらに見られる自我の「同一性」や作品の「唯一性」という観念への挑戦について、彼女の手稿や諸作品と連関させながら考察する。 カーンの初期の交友関係(書店主Sylvia Beach, 詩人Henri Michaux)、政治活動から接近したシュルレアリスト達(A. Breton, G. Bataille)との関わり、また「人形」というテーマに関する(Hans Bellmerとの)呼応関係等についても詳しく調査・研究する。 さらに、先駆者としてのカーンの仕事を引き継ぐ女性アーティストたちの活動を①1930年代~40年代(G. Arndt, W. Wulz etc.)、②60年代~70年代(L. Bourgeois, M. Abramovic, B. Jürgenssen, F. Woodman)、③90年代~21世紀(R. Rist, T. Emin, M. Hatoum, Sh. Neshat, Lee Bul, 澤田知子etc.)と大きく三つの時期に分けて、ステレオタイプ的な女性像や芸術家像から逸脱した「自我」像、「多重」的・「分裂」的な身体イメージを追究する20世紀以降のセルフポートレートについて検討する。
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