研究課題/領域番号 |
23520125
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
桑原 規子 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (90364976)
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研究分担者 |
五十殿 利治 筑波大学, 芸術系, 教授 (60177300)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本美術史 / 美術批評 / 占領期 / 英字新聞 / CIE / 国際情報交流 / アメリカ |
研究概要 |
戦後日本に滞在した欧米人(美術関係者)のネットワーク、日本で出版された英字新聞・雑誌などに掲載された美術紹介・批評が、戦後日本の美術に与えた評価と影響を検証するため、23年度は以下のような資料収集・調査・研究会を国内外で行った。 まず国内では、7月と11月の2回、研究分担者・研究協力者(国内・海外)とともに、研究の方向性について打ち合わせ会を開催し、各自が積み重ねてきた研究について発表、情報の共有を図った。その結果、戦後日本に滞在した欧米人ネットワークの図式化、東京国立近代美術館など公的美術館が果たした役割の検証、幅広い英文資料の収集作業が必要との共通認識を得た。よって、23年度は研究のスタートという位置づけから、特に資料収集に力点を置いた。その中には、文字資料のみならず戦後東京の地図や写真なども含まれる。また、後半期には、収集した英字新聞記事の中から作家や作品、団体名などを抽出し、データベース化を開始した。これは3年の研究期間を通して追加・更新していく予定である。これらの作業を通じて、美術批評に関わった欧米人(おもにアメリカ人)が注目し、評価した日本人作家と作品が浮かび上がるであろう。 2012年3月に行った海外調査(ホノルル)では、ホノルル美術館所蔵の日本美術作品、ハワイ大学マノア校所蔵の日本美術関係資料(スタットラー・コレクション)を調査した。両機関では過去にも資料収集を行っているが、今回は戦後日本に滞在していたスタットラーの資料から英字新聞記事の切り抜きを中心に収集した。そこから、在日欧米人たちが目にしていた新聞や雑誌名、当時批評にかかわっていた人物の名前などの情報を得ることができた。来年度以降、これらの資料や情報をもとに、さらに研究を発展させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は3月11日の震災の影響があり、研究の立ち上がりが遅れたが、夏以降、研究グループの情報交換も円滑に進み、資料収集も進展した。また、収集した英字新聞(Japan Times, Asahi Evening News, Pacific Stars and Stripes)記事のデータベース化にも着手、データベース・ソフトを用いて各研究メンバーが共有できるように環境を整えた。ただ、残念ながら、この時期の重要な英文情報誌Art Around Townについては、断片的な収集に留まり、今後の資料発掘が課題である。 海外調査はシアトルとホノルルを予定していたが、日程調整がつかず、ホノルルのみとなった。シアトルの情報収集に関しては、海外研究協力者の森岡三千代氏に協力を仰ぐ予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進するに当たっては、以下の方策を考えている。1.より幅広い情報を得るため、おもに占領期から1960年代の日本美術研究に携わっている研究者、あるいは日本の美術批評について研究を進めている研究者を招聘して、研究会を複数回開く予定。海外研究協力者の招聘も視野に入れている。2.今年度収集できなかった英字新聞・雑誌の発掘と、データベース化の継続。3.民間情報教育局(CIE)およびCIE図書館と戦後美術の関係を調査する。4.1945~65年の日本人批評家による美術批評を収集、英字新聞掲載の美術批評との共通点、相違点を検討する。5.それぞれの研究メンバーが、これまでの調査を踏まえ、論文発表、書籍出版などを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は引き続き新聞・雑誌資料を中心に収集するため、相応の物品費および資料整理のための人件費が必要となるが、ある程度のデータベース化が進んでいるので、研究を深化させるため、積極的に外部研究者との研究会、論文投稿や書籍出版を目指したい。したがって、外部講師の講演料や交通費、研究成果発表のための投稿費や画像使用料(美術館からのポジフィルム、デジタルデータなどの貸出料)などが生じるであろう。 なお、相手側との日程調整が整えば、研究代表者の海外調査あるいは海外研究協力者の招聘を考えているので、そのための旅費も計上している。
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