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2012 年度 実施状況報告書

Souvenirに見る現代的消費の感性性

研究課題

研究課題/領域番号 23520128
研究機関成城大学

研究代表者

津上 英輔  成城大学, 文芸学部, 教授 (80197657)

研究分担者 牧野 圭子  成城大学, 文芸学部, 教授 (50275103)
キーワード美学 / 消費者行動研究 / souvenir
研究概要

本研究の目的は,観光者によるsouvenir消費を対象として,美学と消費者行動研究の成果を踏まえながら,観光における消費の感性的性格を明らかにすることであり,最終的には現代における消費一般の感性的性格について見通しを得ることである.そのうち,本年度の研究は次の3つを課題とした.課題別,分担者別に実績を述べる.
1.Souvenirと真正性(authenticity)についての文献調査(津上):authenticityの語源的・語誌的検討を進めた.すなわちこの語は「下手人」を意味するギリシャ語authentesに発しながら,15,16世紀に「親」を意味するラテン語auctor(またはaucthor)と混交を来たしたとされる.その結果として,現代の「正嫡」の意味を含んだ「真正性」概念が生じていると考えられる.16世紀のラテン語およびイタリア語文献調査の結果,ある程度この混交を確認することができた.
2.消費に顕著な感性的質の発見(牧野):消費に顕著な感性的質として「ノスタルジックなもの」があると考えた.「個人的ノスタルジア」と「歴史的ノスタルジア」の概念を,喚起される感情の性質や,感性的質の観点から比較した.また「レトロ」を掲げる都内の商店街3箇所で聞き取り調査を行い,意図的な古めかしさと非意図的な古さの違いを検討した.このほか,souvenirにおける真正性とは何かを明らかにすることを目的とし,ハワイと京都のsouvenir店で聞き取り調査を行った.
3.東日本大震災による観光者意識の変化に関する調査(津上):前年度に引き続き,被災地いわき市の調査を行なった.みやげ物屋兼海産物市場の「いわき・ら・ら・ミュウ」では,前年度3月に比べていくらか活気を呈していたが,取り扱う海産物は県外産ばかりで,原発事故が依然として大きな影を落としていることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上述の3つの課題のうち,1.については上述のとおり確認作業を続けたが,最終的結論を得るには,手書き文書を含めて,なお調査を継続しなければならない.
2.の感性的質については,研究成果を次の論文および分担執筆の著作としてまとめたが,刊行が遅れている.
牧野圭子「第三章 消費者行動研究からみたノスタルジア」、楠見孝(編)『なつかしさの心理学』、誠信書房,Makino, Keiko "New notion of nostalgia," In Advances in Consumer Research, Vol. 40. Association for Consumer Research. (in press)(査読あり)
またsouvenir における真正性に関しては,現在調査結果を検討している.今後成果をまとめ,発表したいと考えている.
3.については,平成24年7月の時点では,被災地での観光者意識は平成23年度と大きな変化を呈していないことを確かめた.
しかし,平成23年度に予定していたストックホルムでの調査(津上)は,本年度も延期し,平成25年度前半に集中的に行なうこととした.全体の達成度として「やや遅れている」を選択する所以である.

今後の研究の推進方策

当初,平成25年度の研究では,次の3つを課題とする計画であった.各項目について,これまでの実施状況を踏まえ,次のような具体的計画を提示する.
1.消費概念の規定:これまでの理論的考察と実地調査から得られた知見をもとに,「消費」概念について,特に年度後半に集中的討論を行ない,共同研究の成果とする.
2.研究成果の発表:津上はこれまでの研究の成果を,ポーランド,クラクフで平成25年7月に開催される国際美学会議で英語発表する他,『美学』などの雑誌に論文を投稿する計画である.牧野は,美学会,消費者行動研究学会等で,研究成果を発表する予定である.このほか,関連諸問題についても研究を深め,紀要等に論文を投稿する予定である.
3.東日本大震災による観光者意識の変化に関する調査:前年度に引き続き,福島県いわき市を中心に調査を行なう.
当初からの変更点としては,延期していたストックホルムでの調査を,年度前半に行なう.また,平成24年度に開始したauthenticityについての文献調査を,手書き文書にまで拡大して行なう.

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の研究では,基本的に当初の計画に従う予定であるが,年度前半にストックホルムでの調査を実施する点,また文献調査のため,ロンドンを始めとする各地の図書館調査を行なう点が,当初の予定からの変更点である.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] もう一つの『詩学』注釈:メーイ筆ヴェットーリ宛手紙2通(1559年)2013

    • 著者名/発表者名
      津上英輔
    • 雑誌名

      美学美術史論集

      巻: 20 ページ: 125~179

  • [雑誌論文] アリストテレース『詩学』の資料伝承とヴェットーリによるrhythmos概念の誤解2013

    • 著者名/発表者名
      津上英輔
    • 雑誌名

      成城美学美術史

      巻: 19 ページ: 1~19

  • [学会発表] 消費者のノスタルジアとレトロな商店街2012

    • 著者名/発表者名
      牧野圭子
    • 学会等名
      明治大学ビジネス・イノベーション研究所 研究会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      20121130-20121130
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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