研究課題
本研究の目的は,観光者によるsouvenir消費を対象として,美学と消費者行動研究の成果を踏まえながら,観光における消費の感性的性格を明らかにすることであり,最終的には現代における消費一般の感性的性格について見通しを得ることである.そのうち,本年度の研究は次の3つを課題とした.課題別,分担者別に実績を述べる.1.真正性(authenticity)についての文献調査(津上):ロンドンの大英図書館を中心に,手書き文書を含む16世紀以前のラテン語文献における“authenticity”の語誌的検討を進めた.その結果,多くの文書でauthenticus(真正な)がauctoritate receptus(権威によって認められた), auctotritate plenus(権威に富んだ)などと説明され,この概念とauctoritas概念との混交が実際の文書で確かめられた.2.ストックホルムなどヨーロッパ各地の観光施設におけるsouvenir販売状況の調査(津上):ストックホルム(スウェーデン),オスロ(ノルウェイ),ヘルシンキ(フィンランド),ロンドン,クラクフ(ポーランド)で調査を行なった.訪れたのはいずれも夏の観光シーズンであり,多くの観光者が屋外に出てどこも賑わっていたが,意外なことに日本では必ず見られる露店風のsouvenir販売施設が見当たらず,観光者の衝動的souvenir購買意欲に応える体制がないことがわかった.3.現代における消費一般の感性的性格についての見通し(牧野):消費者行動研究では,近年,商品購買後の「感性的経験」に注意が向けられている.Souvenirは,購買後の感性的経験が特に重要な意味を持つ商品であると考えられる.本研究では,昨年度までに京都とホノルルの土産物店で行った調査の結果を見直すと共に,感性の概念について学際的に検討した.また,絵画作品の分析を通してノスタルジアの問題について検討し,紀要論文にまとめた.
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Hawaii International Conference on Arts and Humanities, 12th Annual Conference, Proceedings
巻: 12 ページ: 416-433
成城文藝
巻: 224 ページ: 98-118