美学は大きく変貌しつつあり、基礎概念の見直しが不可欠である。今回は特に創造概念を考察した。 自動詞的変化を旨とする日本の伝統思想の中に、創造の場所はない。この概念は、いくつかの思想伝統を原資とし、西洋近代を主導する役割を担ってきた。その到達点がロマン的思想で、創造を主要な価値と見做し、天才や霊感を語って藝術に独占的権利を認めた。20世紀になると、藝術も大きく変化し、科学・技術の重要性が高まって、知的な創造概念が台頭してきた。しかし、知的発想のなかにも身体的契機がある。創造的行為は産出と判断の2契機からなり、知的なものを含め産出は身体的、判断は頭脳的である。身心の緊密な相関が創造の鍵を握る。
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