平成23年度より開始した本研究は、研究代表者一名、研究協力者四名によって遂行した。まず、着手したのは、テーマの考察上、基点となる作品の調査および写真撮影である。 第一年度の平成23年には、画帖を中心に調査を行った。成果としては、住吉具慶・狩野秀信筆「時代不同歌合画帖」(静嘉堂文庫美術館)、狩野探幽筆「百人一首画帖」(伊達家旧蔵、個人)、同「新三十六歌仙画帖」、住吉具慶「徒然草画帖」(以上、東京国立博物館)などがある。平成24年度は、前半期に前年度調査した作品群の整理を行い、後半期において「扇面散屏風」(旧原家本、東京国立博物館)を調査した。本作も全体がカラーで紹介されたことがなく、今回高精細ディジタル撮影を行うことができた。平成25年度は前年度までに果たせなかった屏風絵関係の調査を進展させた。まず、本研究において重要な位置を占める山本素軒筆「明正院七十賀月次図屏風」(奈良・円照寺)の調査・撮影を実施し、さらに本作に関連する文献資料の調査を宮内庁書陵部において行った。また研究協力者二名を派遣して、海外調査を実施し、米国・イエール大学美術館においては、山本素軒筆「十二か月花鳥図屏風」の調査と撮影を行った。 以上により、本研究プロジェクトにおいて計画していた調査作品のうち、最重要のものの調査および撮影をほぼ完了することができた。絵画としての関心ばかりで書の料紙などを含めた総合的な全体像が紹介されることの少ない資料群であったが、実際に調査することによって、探幽の「百人一首画帖」における中国風の木版刷料紙の使用、素軒屏風における色紙や縁の装飾への関心など、従来指摘されてこなかった装飾的要素についても新しい知見を得ることができた。詳細の報告は研究成果報告において行うことにしたい。
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