本研究は、南イタリアのアプリア地方に位置する一港湾都市オトラントの大聖堂舖床モザイク(1163-1165年)をテーマとして、図像解釈学の観点から個々のモティーフを検討するとともに、 舗床モザイク全体が体現するところの神学的メッセージを解読することを試みた。身廊中央には十字架を示唆する大きな樹木が据えられ、枝葉の間に旧約の物語が配される。聖俗混在する図像群の解釈は、容易ではない。本研究では①南翼廊の図像をどう解釈するか、②大聖堂各部分がいかに統合され、連続性・一貫性ある全体をつくり出しているのかという2点を解明することによって、舗床モザイクの背後に横たわる中世キリスト教の死生観について考察した。
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