研究課題/領域番号 |
23520136
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
菅原 真弓 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10449556)
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キーワード | 木版画 / 浮世絵 / 19世紀 |
研究概要 |
2012年度は、本研究のテーマである幕末明治期の木版画の主要な作家である月岡芳年(1839~92)についての作品調査を精力的に実施し、かつ調査結果をまとめた論文等を執筆し、発表した。具体的に述べれば、「月岡芳年美人画考」(『GENESIS』(京都造形芸術大学研究紀要)16号、2012年11月、京都造形芸術大学)、「月岡芳年と明治の媒体(メディア)」(『没後120年 月岡芳年展』図録、2012年10月、太田記念美術館)、「月岡芳年と江戸」(『浮世絵研究』(太田記念美術館研究紀要)第三号、2012年11月)の3本の論文を発表した。またこの画家と幕末の土佐(高知県)で活躍した画家・絵金との関係について、明治美術学会において口頭発表を行った(高知県立美術館主催「絵金 極彩の闇」展シンポジウムとして開催、2012年10月、高知県立美術館)。 これに加え、やはり本研究における主たる作家のひとりである豊原国周(1835~1900)についての文献調査、作品調査(この作家の作品については本学が所蔵しているものの調査を主に行った)を実施し、展覧会としてその研究成果を発表した。その一つが、京都造形芸術大学芸術館リニューアルオープン記念特別展「豊原国周 飛び出す国周と空飛ぶ尾上菊五郎」(2012年4月~6月、京都造形芸術大学芸術館)である。また同館の「コレクション展I」(6月~7月)、「コレクション展II」(10月~11月)においても、それぞれのテーマを「幕末期の国周作品」、「歌舞伎十八番、新歌舞伎十八番と国周」と設定し、テーマに該当する作品調査を行った上で出品した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる作家のひとりである月岡芳年に関する研究としては、ほぼ予定通りの研究の達成度であると考えている。この画家については、2012年が没後120年にあたっていたため、大規模な展覧会が開催されるなど注目が集まり、結果として発表媒体に恵まれたことも幸いしている。但し本来は、2012年中にこの作家に関するこれまでの研究をまとめ、『評伝 月岡芳年』(仮題)と題する研究書籍として刊行したいと考えていたが、それが果たせなかったのが悔やまれる。現在、この研究書籍の刊行については、まとめの段階に入っており、今年度中には刊行への道筋をつけられるように考えている。 また他の作家に関しても、2012年度は豊原国周作品についての研究を、まだ満足のできるレベルまでは達していないが、着手すること、そして展覧会という形ではあるが発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、先の項にも記した通り、月岡芳年の人生、作品について詳細にまとめた研究書籍の執筆、まとめを行う。そしてこの研究を土台に視野を広げ、芳年との関係性において、周辺の作家について調べを進め、2014年度以降の研究の土台作りをする予定である。2014年度以降は、月岡芳年を含め、近代以降の「歌川派」の作家たちの画業についてまとめた研究書籍『近代歌川列伝』(仮題)の執筆を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、現在執筆を進めている研究書籍の刊行が最大の目標となる。したがって、その執筆の途上で確認すべき点や確認すべき作品などが改めて発見されると思われ、文献資料の調査等に用いる交通費支出が見込まれる。また、まずは月岡芳年を中心とした幕末から明治期の木版画作家に関する研究サイトの(研究についてのデータをまとめたもの)立ち上げを目指しているため、PC周辺機器の物品購入などが予想される。
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