最終年度となった平成26年度は、新たに明治の浮世絵師・豊原国周(1835~1900)を中心に取り組んだ。それまでの作品資料調査に基づき、まずは論文「豊原国周研究序説」(『GENESIS』 京都造形芸術大学紀要18号)を刊行した。豊原国周は、幕末明治期の浮世絵師として周知の存在であるが、実は先行研究の蓄積は浅く、その研究史さえまとめられていない状況であった。また伝記事項にも不明な点やあやふやなままに踏襲されてきた点が多く存在する。そこで拙論では、これまで国周について触れられたすべての論考や記事などを網羅して時系列に配置して研究史の流れを精密にたどると同時に、研究史における問題点を抽出した。併せて問題点の解明に取り組み、かつ国周の作品研究へと向かう第一歩として特色ある画面構成について言及した。 さらに国周作品の画面構成について検討すべく基礎的な文献収集と作品調査を実施した。その結果、国周作品の最も大きな特徴はその「大首絵」作品群の構図にあり、それが必ずしも東洲斎写楽以降引き継がれてきた役者絵の大首絵とは違った視点によって描かれたものであり、国周独自の特色といえる構図であると考えるに到った。そこで「豊原国周研究―大首絵の構図を中心に―」(『GENESIS』京都造形芸術大学紀要19号、掲載決定済、2015年11月刊行予定)を執筆した。またこの拙論と同テーマによる学会発表「豊原国周の大首絵作品について」(第68回美術史学会全国大会、2015年5月、於・岡山大学)を行なうこととなった。 加えて最終年度は、懸案であった拙著『評伝 月岡芳年(仮題)』の原稿をまとめる作業にも取り組んだ。これは途上であるが2015年秋には脱稿予定としている。
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