研究課題/領域番号 |
23520137
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
河上 眞理 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20411316)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イタリア美術 / イタリア美術史 / イタリア王国 / 19世紀 / 歴史画 / レオナルド・ダ・ヴィンチ |
研究概要 |
本研究は、19世紀になってイタリア半島に初の統一国家イタリア王国が誕生することにともなって成立した「イタリア美術」という概念の形成過程を、絵画を中心として、遺産としての過去の美術の扱いと、同時代美術の動向との関係を通して明らかにしようとするものである。 初年度である平成23年度は、イタリア王国の美術政策に関する情報収集をおこない、かつイタリアにおける実地調査として、「美術遺産の扱いの諸相」に関する研究を重点的におこなった。具体的には、美術館の国立化に代表される美術政策史に関する史料・文献を博捜する一方、イタリア国内で開催された歴史画に関する展覧会情報を収集し、19世紀美術家の制作によるイタリア半島における歴史画の網羅的な把握に努めた。とりわけ、以下の2点について重点的に研究を進めた。1.イタリア王国における歴史画というジャンルの中に、過去の、とりわけ、ルネサンス期に活躍し、今日においても世界的に著名な芸術家を主題としたものが多数あり、その代表的な芸術家としてレオナルド・ダ・ヴィンチを挙げられる。本研究代表者は、2011年度イタリア学会大会において「イタリア王国におけるレオナルド・ダ・ヴィンチ像(イメージ)」と題した研究発表で、イタリア王国という新興国とルネサンス期の芸術家であるレオナルド・ダ・ヴィンチとの重層的な関係を指摘した。2.これまでの調査・研究から、「イタリア美術」という概念の形成自体はイタリア王国という統一国家建国以前から、イタリア半島各地において文学や歴史学の中で唱えられていたことであることを突き止めた。恐らく、これがイタリア王国の美術政策をなす上での土台になったと考えられ、今後、さらに調査・研究を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3点の理由により、研究はおおむね順調に進展していると考える。1.2011年9月及び2012年2月のイタリアでの研究調査旅行によって、本研究を推進する上で必要な情報を幅広く得ることができた。2.国内及び海外において研究成果を発表する場をニ度得ることができた。その第一は、2011年度国内イタリア学会大会において「イタリア王国におけるレオナルド・ダ・ヴィンチ像(イメージ)」と題した研究発表をおこなった。研究発表の内容は近い将来に論文にまとめ、然るべき学会誌に投稿したい。第二は、2012年2月のイタリアでの研究調査旅行の際に、ローマ・ラ・サピエンツァ大学建築及び景観修復専門課程からの依頼により、同大学建築学部において、本研究に関連する講演をイタリア語でおこない、問題を喚起するとともに、現地研究者との意見交換の場を得ることができた。3.本研究は、19世紀後半、イタリア半島に初の統一国家イタリア王国が誕生することにともなって成立した「イタリア美術」という概念の形成過程を研究しようとするものであるが、現地調査、現地研究者との交流により、関連する情報を得る、あるいは示唆を得ることができ、本研究の土台を広げ、かつ堅固なものにできるとの確信を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.イタリア王国統一以前に、「イタリア美術」について論じている文献の調査・研究を引き続きおこなう。2.イタリアにおいて制作された歴史画における画題の傾向の分析をする一方、近隣列強国であるフランス・イギリスとの傾向との比較分析をおこなう。3.海外における実地調査として、引き続きイタリア、さらにフランス及びイギリスもにおける調査をおこない、主要作品を実見するとともに、同時代資料(書籍、新聞、雑誌、写真など)の収集に努め、その意図及び意義を分析する。フランス及びイギリスにおける「イタリア美術」の取り扱いにも注目していきたい。4.平成23年度に発表した研究を論文にまとめるべく、さらなる国内の図書館などでの調査研究をおこなう。5.国内で開催される学会に出席し、研究者との交流の場をもち、勉強の機会を得るように努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究に必要な図書、資料整理用品、パソコンソフトなどを購入する。国内及び海外での研究調査の費用に充てる。その他に、印刷費、運搬費、研究成果発表費などに使用する。
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