最終年度の課題は、これまで継続してきたルーモールについての調査と分析を、同じ1つのコンテクストの中で生きてきた同じ1人の人間の中で総合することであった。また、そのための具体的な作業としては、ルーモールのテクストを日本語に訳し、彼についてのウェブページを作成するなどして、研究成果を公開することを予定していた。 ルーモールのテクスト翻訳については『料理術の精神』を選択することにしていたが、最近になって、すでに中央公論美術出版社において翻訳の計画が、かなり完成度の高い状態にまで至っていることが判明したため、急きょ題材を変更して『イタリア研究』の一部を、紹介のかたちで訳すことに変えた。ただし本年度中の完成は困難であるため、完成した箇所から順次ウェブページ上に掲載することにした。 その他、本研究の成果発表の場として開設したウェブページには、本研究の概要、代表者による研究成果、ルーモールの年譜や著作、関係文献リスト、原典や肖像、素描作品などへのリンクなどを、原則として日英独3ヶ国語対応のかたちで掲載した。ドイツ語への対応が間に合わなかったところもあるが、全体としては、ほぼ当初の目的を達成したと考えている。 なお国外旅費による調査では、ルーモールがゲーテやホルニと出会ったヴァイマールと、彼がホルニをコッホに預けるとともに、ローマでの主たる滞在地としていたオレヴァノ・ロマーノを訪れて、風景画についての彼の捉え方の近代性について明らかにするための資料を収集した。この問題については、「イメージ人類学」という普遍的な視点からの視覚文化研究との関連で、今後も検討を継続したい。
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