一般に「鎖国」として知られている江戸幕府の政策下に、日本へ輸入された清時代の中国陶磁の実体を探るべく、伝世品・出土品の総合的調査を実施した。この調査を通して、唐船による長崎経由の貿易だけでなく、琉球を介した輸入経路の存在を明らかにすると共に、この経路によって民間貿易での輸入では考えられないような清朝官窯製品が日本へもたらされ、鍋島焼や薩摩焼などの日本陶磁に意匠面で多大な影響を与えていることを明らかにした(「清朝官窯と近世日本」『陶説』728号、2013年)。また、国産品で品質的に同程度のものが充分調達可能であったにもかかわらず、18世紀終盤以降清朝陶磁の輸入量が増大する背景に、当時の日本における中国趣味の興隆があったと考えられることを指摘し、それが既に研究者間で注目されている煎茶道と関係するだけでなく、茶の湯とも密接に関わっていたと考えられることを論じた(「いわゆる「新渡物」にみる茶の湯の中国趣味」『陶説』734号、2014年)。 平成25年秋には、本研究の成果報告の一環として特別展覧会『魅惑の清朝陶磁』を京都国立博物館にて開催し、共催新聞社の協力を得て、研究成果を集約的に盛り込んだ図録の作成も行い、研究成果の公表に努めた。さらに、研究の最終年度である平成26年度には、共催新聞社協力のもと『魅惑の清朝陶磁』展を国内巡回させると共に、講演会などの行事を通して研究成果の普及・周知を図った。
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