本研究は、アメリカにおいて19世紀からさまざまな形で展開される「少女・女性の成功物語」を、ゴシック的要素と結びつけることで、「プリンセス(願望の)物語」と位置づけ、それを用いることで、アメリカの映像作品で描かれる「プリンセス」と、一見それとは対照的とみなされてきた「戦う女性」が、ともにゴシックの呪縛を帯びた、共通の矛盾・問題点をはらんでいること、またそれが広くアメリカ文化に浸透しつづけている女性像の問題と結びついていることを論じるものである。
最終年度にあたる26年度では、引き続き、劇場公開の映画とアニメーションの「プリンセスもの」と「戦う女性もの」の作品の分析を行い、その一方で、当初は含めずにいたが、同時代の重要なジャンルとみなせるTVドラマの関連作品についても、昨年度からの継続として分析を行い、ジャンル関連付けを進めた。扱いたい作品が膨大で、厳選してもなお一人で丹念に分析するには時間的限界が生じ、論文として成果をまとめるには至らなかったが、TVドラマを中心に論じた研究は、現在準備中の論文集に掲載予定である。なお、本研究で扱った作品群の情報を、テーマや論点と併せて、インターネットで公開する準備も進めている。 一方、「プリンセスもの」以外のアニメーションにおいて、「戦う女性もの」のテーマを内包する作品の主人公にも、プリンセスたちと同様にゴシック的呪縛の問題が当てはまることを、論文「主人公になったティンカーベル」において明らかにした。これにより、「プリンセス」と「戦う女性」という2つの女性像が、女性を囚われ状態へと向かわせるゴシック的呪縛と結びつきながら、すでに幼少時から女性たちに提供されていることを示すことができた。 さらに当年度は、2つの担当講義において、途中経過を含む研究成果を資料として活用することができ、またそこでの学生の反応を研究の進行に役立てることができた。
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