研究課題/領域番号 |
23520147
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
太田 圭 筑波大学, 芸術系, 准教授 (80194158)
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研究分担者 |
程塚 敏明 筑波大学, 芸術系, 准教授 (40292544)
吉田 滋樹 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90230739)
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キーワード | 現代日本画 |
研究概要 |
【内容】研究代表者:太田は、古典技法書に書かれている大根の絞り汁と卵の白身に加え、緑茶、紅茶、みかん果汁等の塗布による銀箔の変色防止についての経年変化を、実験並びに実制作品において考察し、その効果を確認した。笹の葉による膠液の防腐作用については、通年の実験を通して、季節ごとの効果の差異を考察した。コラージュに用いる糊については、薄い和紙のみではあるが、ほぼ予測通りの効果を確かめることができ、技法的にも確証を得ることができた。研究協力者・程塚には、従来から自作品に用いている銀箔の経年変化についての考察を依頼していた。その防止法はドーサ液の塗布によるものであるが、良好な結果を得たとの報告を受けている。研究協力者・吉田には、膠液の成分分析と、笹の葉の防腐効果ならびに抗菌作用との関連性について、そのメカニズムの解析を依頼した。大根の絞り汁の変色防止については、平成25年度の実験のための準備を進めている。 【意義】伝承的技法を資料で読むだけでなく、実際の技法として検証することは、研究代表者が勤務する、筑波大学の芸術専門学群及び大学院博士前期課程及び後期課程の学生の実技指導のために必要なことである。近代以前から伝承されて来た日本画技法に対して、科学的根拠を伴って今後の制作ならびに指導に活用するところに本研究の意義がある。 【重要性】伝承されて来た「これまでの技法」をベースとして、それらを現代に適合ならびに応用させ「これからの技法」として実用化することの意義は大きいと考える。それらの情報を筆者を含めた日本画制作者に対して提供することは、現代日本画の今後の在り方を考える意味でも重要である。日本画作品の耐久性とも関わる伝承的技法の検証は、今後の日本画制作において重要な位置を占めると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究代表者】大根の絞り汁の銀箔の変色防止効果についてと笹の葉のもつ防腐作用についての実践では、その効果は認められたが、その科学的根拠についての検証がやや遅れている。様々な液体の塗布による変色防止効果について、平成25年度は、本金箔・水金箔・青金箔・白金箔・銅箔でも検証する予定である。 【分担者A】自作品における銀箔部分の変色についての考察を依頼している。分担者の技法はドーサ液の塗布によるものであるが、制作数年経た程度では影響はないようであることがわかった。 【分担者B】古典技法の根拠となる分析実験を依頼しており、平成24年度は笹の葉の膠液に対する抗菌作用についての実験を継続する中で、随時途中経過の報告を受けていた。現在データを集計・分析中である。また、大根の絞り汁による銀箔の変色防止に関しては、その分析等の実験準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
研究体制はこれまでと同じく3名で変更はない。平成23年度及び24年度の研究結果を踏まえ、最終年度である本年度も実制作を通した研究を主として計画通りに進める予定である。また、古典技法に関する資料について不足しているので、その収集につとめる必要が生じた。これまでの2年間という短期間で得られた技法の効果は、その根拠とともに順次、勤務先の学生ならびに公開講座への参加者に向けて提供していく。また研究代表者の日本画制作においても実際に使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、伝承的古典技法の検討が継続されるので、実験用消耗品の購入が主となる見込みである。その他、銀箔の変色防止に関する資料の追加研究が必要になったため、変色防止に関する資料の購入も予定している。また実見が必要である日本絵画とりわけ板絵作品の考察のための旅費も予定している。そして古典技法の科学的根拠に関するデータの提供に対して謝金を計上している。この他には研究成果のとりまとめと公開のための印刷費等の使用計画がある。
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