研究課題/領域番号 |
23520149
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮原 克人 筑波大学, 芸術系, 講師 (80400662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 農閑工芸 / 工芸 / 民藝 / 木工 / 漆芸 / 山林資源 / 樹木 / 木 |
研究概要 |
「農閑工芸」の事例収集と分析から「農閑工芸」を定義付けした上で、生産地域と人的交流を通して、芸術の視点による地域資源の再発見を試み、「農閑工芸」を活用した新たな造形教育プログラムを構築することを目的とした。「農閑工芸」とは造語であるが、「農閑工芸」を定義付けるひとつの要素として、「ありもの」を活用した物作りいう事が言える。「農閑工芸」は、山林資源を活用することや雪の深い地域の冬の仕事として現在に至っていることから、手に入る身近な山林資源である「ありもの」を素材として作られてきた。「農閑工芸」の教育プログラムへの活用は、「農閑工芸」の構造的な理解・解釈を必要とし、山林資源の手に入りにくい都市部でも実施可能なものでなければならない。そのため、「ありもの」による造形表現に焦点を当てたワークショップを実施した。ワークショップでは、台風によって折れた「木の枝」を造形素材とした。小さな造形物から直径5Mにおよぶドームの作品等が作られた。「ありもの」の素材である「木の枝」を作品化する試行錯誤が、素材に対する深い理解力や柔軟な思考の獲得に繋がる事が分かった。現在の教育現場においては、組み立て式のもの、半完成品となって用意された物など、安易な教材が氾濫している。「農閑工芸」は用意されたものではなく、身近に存在する素材を用いる。「ありもの」という一見不自由な素材を用いる事で、造形素材への深い理解力を得るための有効な手段である事が分かった。ワークショップでの総括から、樹の加工方法についての事例収集の必要性を感じ、樹を裂いて、樹皮と共に編み込んでいくオエダラ箕制作の調査を実施した。そこでは、素材となる樹木や樹皮の活用方法について新しい知見を得る事ができた。今後も「農閑工芸」の事例調査と教育プログラムへの活用方法を探るワークショップを研究の柱として実践していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「農閑工芸」を定義付ける上で、様々な事例が残る福島県を中心に調査を開始し基礎的資料を作成する予定であったが、研究対象である福島県での調査及び学生とのワークショップは震災の影響のもと実施することが難しかった。そのため「農閑工芸」の生産現場の調査は少し遅れたが、本研究を推進するために効果的な調査地を絞り込む事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り「農閑工芸」の生産方法の調査、事例収集を行ない基礎的資料を作成する。ワークショップ等を通して「農閑工芸」の教育プログラムへの活用方法を探求する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「農閑工芸」の生産方法を調査するため旅費、謝金を計上する。教育プログラムへの活用方法は、ワークショップや展覧会等の実践を通して研究する。調査及び活動の成果をまとめ、研究成果の公開に向けた準備を行う。平成23年度実施予定であった福島県での調査及び学生とのワークショップは震災の影響のもと実施することが難しかったため、その分の研究費は平成24年度に繰り越す。繰り越し分の研究費は平成23年度実施予定であった調査及び学生とのワークショップの実施において使用する。
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