本研究の目的は、日本の草創期の書論を精査することで、従来通説となっている日本書道史を再構築することにある。そこで、古書論の一つ、世尊寺家六代目・藤原伊行著『夜鶴庭訓抄』(1165年頃成立)を根幹に据え、伝存する写本を比較・検討し、定本を立てた。これにより、中古・中世の書藝術観が、近世・近代の文人や能書、さらに現代に生きる私たちに与えた影響を明らかにすることができた。本研究を遂行することで、「日本人の美意識とは如何なるものであるか」という観点により、一つの新たな日本書道史観を樹立する契機となった。
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