研究課題/領域番号 |
23520153
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
牧 陽一 埼玉大学, 教養学部, 教授 (40241921)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中国現代アート / 政治性 / 艾未未 / 左小祖咒 / 北京草場地 / 北京798 / 台北市立美術館 |
研究概要 |
2011年度は9月、11月と北京の調査、12年1月に台北の調査を実施できた。北京では798、草場地等「芸術区」の調査、資料収集を行うとともに艾未未(アイ・ウェイウェイ)と面談した。中国現代アートにおける政治性を考える上で艾未未は現在最も重要なアーティストといってよい。艾未未は11年4月3日に行方不明となり81日間拘留され6月22日に釈放された。現在は軟禁状態にある。09年から3年連続のインタビューを行い現状の把握に努めた。さらに艾未未との関わりの大きい写真家の榮榮(ロンロン)、ロックミュージシャンの左小祖咒(ズオシャオズージョウ)にも面談することができた。また台北では台北市立美術館で「艾未未・欠席」展を調査し、当館の学芸員や観客に美術展について聞き取りした。成果は大学の紀要、アサヒカメラ、ウェブ版のアートイットに公表することができた。自由な表現を追求すれば必ず人権問題、社会問題に触れないわけにはいかない。アーティストはそれ以前に「公民」であり、こうした問題を避けては通れない。特に現代中国においては生活している限り政治性は回避できない。特にかつて国家に裏切られた経験を持つ者はすでに政権との信頼関係は失われており、反体制的な活動を余儀なくされている。こうした実態を艾未未、左小祖咒らを通じて、具体的に追求した。ヨーロッパやアメリカ、中国、台湾等の文献資料、映像資料を駆使して、また中国、日本の研究者から成果を集め、『艾未未読本』を編集した。同書は国内外で初めての本格的な艾未未研究書となる。12年5月現在出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国現代アートにおける政治性を考える時、艾未未が最も重要なアーティストである。当該研究では艾未未の全体的な芸術活動、社会活動を追っており、大きな成果も得ている。しかし艾未未個人研究に偏っており、今後領域を拡大し、他の作家、「芸術区」地域別の状況を把握していかなければいけない。調査は北京と台北から更に上海、広州、他の地域へと広げていく必要がある。また文献調査も1930年代のグラフ雑誌『時代画報』CDなどを入手したものの、歴史的な資料収集は不足しており、収集、整理が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
艾未未個人研究に偏っており、今後領域を拡大し、他の作家、「芸術区」地域別の状況を把握していかなければいけない。調査は北京と台北から更に上海、広州、他の地域へと広げていく必要がある。また文献調査も1930年代のグラフ雑誌『時代画報』CDなどを入手したものの、歴史的な資料収集は不足しており、収集、整理が必要である。領域の拡大と歴史的な資料の収集と考察が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は国内外の大学、研究機関へ調査に赴くとともに、先に述べたように調査を北京と台北から更に上海、広州、他の地域へと広げていく必要がある。韓国、中国、日本の研究者によるシンポジウムも企画されており、積極的に参加し、東アジアに共通する(或いは反目する)現代アートにおける政治性の在りかを確認していく必要がある。よって今年度は資料購入の物品費、調査のための海外旅費等に使用していく。また資料整理、専門知識の導入のための謝金にも使用する。
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