中国現代アートにおける政治性を、艾未未を中心に研究を進めた。年度の初めから艾未未のドキュメンタリー映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」の字幕監修を数回にわたって行い、10月に公開した。当作品は艾未未拘留までの個人史を的確に捉えており、監督のアリソン・クレイマン氏との会談では有効な知識を得ることができた。また編集前の艾未未インタビュー映像も提供された。これは公開されていないもので艾未未研究には貴重な映像資料となる。6月これまでの研究結果を中国文芸研究会例会(大阪)で発表し、大阪市立大の松浦恆雄氏らにアドバイスを受けた。またジャーナリストの古畑康雄氏、麻生晴一郎氏から中国の公民運動に関する専門的な知識を得ることができた。ここから現代アートと政治性の問題を、公民社会の形成へと絞っていく方向性が明らかとなった。9月には北京調査を行い、艾未未、左小祖咒、榮榮各氏にインタビューできた。「北京東村」から20年のアートと政治との関係を知ることができた。9月には2013年の艾未未の作品、行動、発言をまとめた「艾未未2013」を公表した。連載中のウェブ・アートイットでは「艾未未のことば」6、7を訳出し解説を加えた。四川大地震5年目に当たり、大阪大の浅見洋二氏の翻訳提供も受け、2008年四川大地震当時の艾未未の発言をまとめた。また10月に福岡で玉川祐治氏らと打合せし、艾未未のアルバム『神曲』から「シャーボーイー」「ラオマァティホア」「朝陽公園」「明日を返せ」字幕版MVを集広舎HPに掲載した。また中国現代アートの作家、作品について『世界人名辞典』『中国百科』に執筆した。年度末は単行本『アイ・ウェイウェイスタイル』の編集校正に費やされ、2月に刊行できた。2012年刊行の『艾未未読本』と合わせて、日本における艾未未研究の基礎になるだろう。2月東京で艾未未の弁護士浦志強にも会うことができた。
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