研究課題/領域番号 |
23520154
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加藤 修 千葉大学, 教育学部, 教授 (20302515)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ESD / ワークショップ / 地域活性化 / アートプロジェクト / アート / 地域連携 |
研究概要 |
アートをコミュニケーションツールとしながら恊働活動をすることで、学生・市民が自己発見・他者理解をして、コミュニケーションベースを確立することをサポートした。今年度は原発事故と大震災が起き、国民がこれまでの自分と向き合う局面に立たされた。長年継続してきたアートプロジェクトの核心を切実な思いで多くの場面で実践展開するなか、「現実」と向き合うプロジェクトのあり方を大学生スタッフも実感した。(1)「市民スタジオ/記憶の美浜、そしていま未来」:<埋め立て>など大きな変化のあった稲毛海岸の60年を振り返り、問題意識を持つことを目的に、市民が所有する写真とコメントを募集し一斉展示した。(千葉市民ギャラリー・いなげ) (2)「会話の地層」:予め用意した「大切なもの・こと」などのテーマや、参加市民から募ったテーマについて、市民が考えをテーブルクロスと木製のタグに文字で綴る。会期中の鑑賞者の追加記入も認め、一連の行為すべてを作品とした。作品の定義や美術館の役割についても再考を促す場とした。(千葉県立美術館)(3)「旗をつくる_住みたい国を考える」:異世代の年齢層を参加対象とし、国のあるべき姿をそれぞれが考え、その旗を制作した。旗の絵画的な善し悪しは問題にしない。(千葉県立美術館)(4)「色彩で対話しましょう」:入選入賞を目的としない、制作者と作品のあるべき関係性を美術関係者が極めて多い国立美術館にて展開。(国立新美術館)(5)「患者さんとつくる」:4年間継続することで病院の方からも意見を伺い、質を向上させている。本年度の光のオブジェのテーマは「関係性」。(千葉大学医学部附属病院)(6)「100人ワークショップ」:中学生を対象とする木組みによる大型オブジェ制作(千葉県立美術館)*(1)~(3):NPO法人ちば再生リサーチとともに「創造海岸アートプロジェクト実行委員会」を立ち上げ、企画を担当。私からは3企画を立案し実践した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)学生のコミュニケーション能力開発の新手法としての提案を行う/本年度も前期は授業内で、アートの定義・地域連携の意義や目的・ファシリテーターなどについて学び、ワークショップの演習後、アートプロジェクトを企画した。後期はそのプロジェクトを、彼らが中心となり地域・現場において実践した。実践に向けての広報物の制作、広報活動、開催施設との調整、ワークショップで使用する材料・道具の作成、ワークショップ当日の連携等、綿密なコミュニケーションが必要な状況を作ることで、彼らは確実に能力を増した。また、大学内で学習する専門分野や各自の得意分野により、活動内における役割分担がされ、互いにプライドを持ちながら関係性を築いた。(2)世代間連携を生み出し持続可能な社会への意識の萌芽を促す/大学生スタッフは実践活動を通して異世代とのコミュニケーションを増した。企画運営にあたり地域スタッフと対応する場合は、彼らにとっては年長者であり、ワークショップ当日においては、「世代間連携」を意識し参加者を募ったワークショップが多いため、大学生は広範囲な年齢層に挟まれながらコミュニケーションをとることになる。その中で彼らは、過去の自分や未来の自分を垣間みながら自分の世代の意味と役割を体感した。(3)大学と地域の新しい連携のあり方を見いだす/多様な人間と活動を繰り返し認知されることで「地域人」としての居場所が得られることの実感を得た。6つのプロジェクトすべてを予定通り展開でき、ワークショップ参加者を対象としたアンケートや大学生の振り返りの文章も得られた。また、本年度ティーチングアシスタントとしてプロジェクトの補佐をしてきた大学院生が、学内で独自に「miraiキャンプ」という実行委員会を立ち上げ、福島県、千葉県の小学生を対象とする子供サミットを企画実践した。本研究の最終目標とする学生主体の地域連携活動の実像が見え始めた年となった。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度においても、2011年度と同様、病院・美術館等各地域・施設においてアートプロジェクトを継続的に展開する。また、新たに学校関係、地域連携活動を実践している地元商工会との連携を予定している。また、年間の活動内容を載せたドキュメント2012も制作する。2011年度の活動内容は質量的に極めて充実していたが、その実践成果をデータ化することの難しさを感じた。今後は、アートプロジェクトにおける「心の伝達作業」というデリケートな部分を損なわない範囲でアンケート・インタビューなどの機会を増し、緻密なデータ収集をすることを目標としたい。(参加者に、調査実験のための活動とは伝わってほしくない。)また、アンケートは質問項目を吟味し簡潔なものとし、その調査対象を、アートプロジェクト参加者に加え、大学生スタッフにも範囲を広げるものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費/本年度とほぼ等量のアートプロジェクト・ワークショップを開催することに伴う、材料・道具等の購入。旅費/ワークショップの実践・研究地域への移動。人件費/データの収集・集計、ドキュメントのページ作成費用としての支出を予定している。その他/ドキュメント2012の印刷費
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