研究課題/領域番号 |
23520155
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
赤沼 潔 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (30267687)
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研究分担者 |
橋本 明夫 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (10237927)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 鋳金 / 銅合金 / 着色 / 熱処理 / 朱銅 / 紫銅 / 緋々 / ミソ焼 |
研究概要 |
古代の鋳銅品から現代の鋳銅作品の色沢の調査を実施するために、国内では富山県高岡市、新潟県で調査した。高岡市は、世界の鋳造技術が集中しており、鋳銅品の種類も多く、多種の調査を実施できた。また、着色所の調査においては、具体的な着色法を見学でき、多くの着色法を把握できた。新潟県は鋳金作家が多く、作家による具体的な着色法を調べることができた。海外では、イタリアのレッジョにあるカラーブリア修復研究所において、古代ギリシャブロンズ像のリアーチェの戦士像を調査する機会を得た。この像は国宝級のブロンズ像で、海中から引き揚げられたものであり、表面に付着していた貝等はきれいに除去され修復はほぼ完了していた。海中で地面に接していた部分は貝等の付着も少なく、時間をかけて自然に表面の色沢が定着しており、美しい緑青を獲得していた。このブロンズ像を調査できたことは大きな収穫であった。 他に文献による調査を実施した。明治期に金属の着色法に関する文献が発行されており、それらを軸に調査した。主に彫金系の着色法の文献が多かったが、鋳銅品に共通する部分もあり、実制作に向けて調査できたが、熱処理に関する資料はあまり多くはなく、今後も調査を継続していく。 次年度からは、実制作に入るため、鋳物肌、色沢面、技法面ごとに分類し、調査内容をデータ化する準備を実施した。また、鋳金作家によるそれぞれ展開している鋳銅品の着色技法に関しては、まだまだ発掘できる可能性があるので今後も聞き取り調査を展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度における基礎資料のまとめや調査に関しては、概ね実施できた。特に鋳銅品の熱処理による着色変化については個人の作家から貴重な意見も収集でき、次年度の研究計画の基本部分の構築ができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得た資料を基に今年度は、鋳銅色見本の作成に入る。鋳銅品の熱処理を基本とし、その多岐にわたる技法を検証しながら、実際に鋳造をしてそれを基に熱処理の効果を確認していく。また、求める色見本が得られなかった場合、それらの技法の再調査を含め、重層的に展開し、結果を出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、鋳銅色見本作成に関わる費用を研究費で実施する。主に、鋳銅品の材料費、それに関わる人件費、また随時発生する再調査費、鋳銅品の分析に関わる費用等が主な支出となる。
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