研究課題/領域番号 |
23520156
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
松村 智郁子 東京芸術大学, 音楽学部, 講師 (60436699)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 明治期 / 蝋管蓄音機 / 音楽 / 声 / 新聞 |
研究概要 |
本研究は、「明治期における音楽録音資料・蝋管(ろうかん)の保存体制と公開手法の研究」(平成18~20年度日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(B)一般 研究代表者:東京芸術大学大学美術館 薩摩雅登, 報告書編集:東京芸術大学音楽学部 松村智郁子)のうち、蝋管の基礎調査:明治期の新聞調査[同報告書 2009, p.87, pp.103-121]を発展させる内容のものである。 平成23年度は、明治期の蓄音機や蝋管の受容から衰退に至る状況を把握し、社会的動向および変遷を明らかにするために、国内は、国立国会図書館、東京都立図書館、国立劇場情報資料館、大阪府立中之島図書館、大阪市立中央図書館、大阪市立天王寺図書館、国立民族学博物館などで「東京朝日新聞」「都新聞」「萬朝報」「大阪朝日新聞」を調査の対象とし、新聞の復刻版やマイクロフィルムを用いて各新聞をくまなく調査した。これらの新聞から収集した約400の記事・広告は、画像データ化し、内容を書き起してテキスト化した。そして、各データを内容ごとに分類し、精読と考察を加えた。 一方、国外の新聞「The Times」(米)と「Le Figaro」(仏)調査を、webサイトのデータベース検索システムで進め、調査状況を確認した。 また、茅ケ崎美術館の「音二郎歿後100年・貞奴生誕140年記念 川上音二郎・貞奴展」などを訪問し、展覧会の展示作品から蝋管の収録の背景を調査した。(川上音二郎・貞奴は、明治期に活躍した役者であり、1900年のパリ万博に出演し、パリにて蝋管に邦楽を吹き込んでいる。その音源は、現在、パリ人類博物館(仏: Musee de l'Homme)にて保管される。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、調査を予定していた新聞は「東京朝日新聞」と「萬朝報」であったが、「都新聞」や「東京新報」「国民新聞」「時事新報」などにも記事・広告の記載が多く含まれていることが前年度の調査でわかり、国内の新聞調査の範囲を広げたことが理由である。また、新聞記事・広告の調査要員の雇用を予定のところ、適任者がみつからないことも、作業に多少の遅れが出ている原因でもある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)国内新聞記事の調査:昨年度と同様に、国内図書館にて明治期の新聞記事の調査を継続する。なお、画像データ化した新聞記事は、前研究にて収集した、1,082の記事(1877(明治10)年~1912(明治45)年の蝋管・蓄音機に関する新聞記事および広告)とともに、最終年度の報告書に掲載することを前提に作業を進める。 また、稀に、各新聞が同内容の記事を取り扱っていることがあるが、記者の情報源や視点により、記述内容が異なるため、全てを統合すると、より深く当時の状況を把握することができる。よって、できるだけ多くの国内の新聞を調査の対象とする。(2)国外新聞記事の調査:前年度の調査の結果、特に「The Times」(米)の関連記事数が膨大であることが解った。対象範囲を増やした国内の新聞記事と同時進行して調査することが困難なため、海外の記事は、論文の中で参考資料として引用することを思案中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)国内新聞記事の調査費:昨年度と同様に、国内図書館にて調査を行うため、旅費と資料複写費が必要となる。(2)国外調査費:新聞記事や実物の蝋管、蓄音機の所蔵館を訪問し、資料の閲覧および資料収集のため旅費が必要となる。(3)新聞記事校正費:収集した記事の校正のため、人件費を考えている。(4)新聞記事入力用機器:書き起こす記事の量が多く、寸暇を惜しみ作業を行う必要があり、携行可能なノートPCの購入を考えている。
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