研究課題/領域番号 |
23520157
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
佐野 靖 東京芸術大学, 音楽学部, 教授 (80187278)
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キーワード | アウトリーチ |
研究概要 |
本研究の目的は、音楽におけるアウトリーチ活動の評価に焦点化し、その観点や基準、方法等を明らかにすることである。本研究では、音楽アウトリーチを「芸術教育・普及活動」及び「協働的な学びの場」ととらえている。フィールドの対象を教育現場(学校・幼稚園等)にしぼり、音楽家・実演家らのアウトリーチ実践者と学校や幼稚園などの受け入れ側(子どもや教師等)、それらを仲介する文化政策・教育委員会等の関係者への詳細な聞き取り調査を通して、質的に音楽アウトリーチ活動のプロセスと成果を評価・検証する方法論を構築することが本研究の眼目である。 平成24年度は、首都圏をはじめ、仙台や長野、神戸などでもアウトリーチを実践するとともに、学校等から評価を含めた聞き取り調査も進めることができた。アウトリーチ実践者と学校関係者、さらには教育行政関係者がいろいろな形で情報・意見交換できたことが大きな成果である。アウトリーチ実践者たちの自己評価や振り返りのシステムも、まだまだ完全ではないが、構築できつつある。また、受け入れ側の評価としては、演奏等の内容のレベルの高さとともに、いかに児童・生徒とかかわり、彼らを意欲的に活動に参加させ、巻き込んでいるかという観点が重要であることが明らかになった。 25年度に向けては、研究のフィールドを焦点化し、継続的なアウトリーチ活動において、児童・生徒や教師、さらには演奏家らアウトリーチ実践者の変容を実証する手立てを提示することが大きな課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音楽によるアウトリーチ活動の実践に関しては、当初の予想以上に量的にも質的にも高いレベルでの取り組みが展開できている。研究の眼目である「評価」に関しても、受け入れ側からは大変積極的な協力をいただき、貴重なデータ資料が蓄積されている。また、本研究の特徴である「協働的な学びの場」としてのアウトリーチも、情報や意見の交換も活発に行われ、大きな成果をあげつつある。 ただし、そうした成果を発信するという面では、課題を残している。さらに、アウトリーチ実践者の自己評価、振り返りに関しては、チェックシートの内容など、まだ一層の工夫が求められる。 以上,総合的にとらえると、「(2)おおむね順調に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのアウトリーチの実践と評価を振り返りながら、対象とするフィールドと実践仮説を焦点化し、音楽アウトリーチ活動のプロセスと成果を評価・検証する方法論を構築する。アウトリーチ活動は、生の音楽経験の交流であり、常に実践のフィールドにおいて評価方法を検証し,再構成する必要がある。また、研究の成果を発信するなどし、外部からの評価を受けることも重要な取り組みとなる。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度には若干の残金が発生したが、これも合わせて次年度の研究費は、引き続き音楽アウトリーチの実践者への謝金が中心となる。これは、本研究も目的遂行には、アウトリーチ活動の実践が不可欠であるからである。また、次年度は研究の最終年度であり、聞き取り調査や学会等での成果発表のための旅費、ならびに報告書作成のための諸経費が必要となる。
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