研究課題/領域番号 |
23520159
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
福中 冬子 東京芸術大学, 音楽学部, 准教授 (80591130)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 冷戦と音楽 |
研究概要 |
これまでに、シカゴ大学附属図書館スペシャル・コレクションおよびワシントン国立公文書館に所蔵されている一次資料の検証を通じて、「文化的自由のための会議」の実体やその「役割」を中心に検証してきたが、本年度はその社会・政治・文化的生成土壌を検証すべく、「会議」の結成時に中心的な役割の担ったイギリス人思想家・文筆家の幾人かの思想やその背景、および「会議」の活動に何らかの関連性を持ったイギリス人作曲家の関係資料を調査した。おもに大英図書館のBertrand Russell Paperの調査、およびロンドンにあるSound and Music(前British Music Information Center)所蔵の一次資料の調査を中心におこなった。 そこから見えてきたのは、「会議」創設当初から内部には相当大きな意見相違が存在したこと、そしてそれらが認識されていたにもかかわらず「会議」の創設がいわば見切り発車で始められたこと、である。これらはのちに「会議」の活動内容にぶれが生じ、最終的には解散にいたったその経緯に大きな役割を担ったとかんがえられる点で、重要である。 なおこれらの成果については3月に香港で開かれた国際学会「Music and the Body」にて発表する予定であったが、一身上の都合で出張を中止せねばならず、次年度以降に廻したいとかんがえている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上に記したように海外資料調査においては一定の成果をあげることができたが、一方で「文化的自由のための会議」視点のみからでは、冷戦期の音楽文化の全体像がバランスよくみえてくるか、多少の疑問を感じ始めた部分もある。たとえば、「会議」がそれへの対立項として自身の活動を掲げた音楽現象は旧ソ連とその衛星国における現象に限定されるわけではなく、むしろ西側各国内の現象も含まれるはずである。これを受け、今後戦略を多少変更剃る必要があるか、次年度以降の計画を再検証することにした。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、多少の計画変更の必要性の認識を受け、そもそも同会議体がニューヨークで生起した際の文脈はどのようなものだったのか、そして西ヨーロッパの主要国を中心に彼らが繰り広げた文化活動が、どのような文脈で受容されたのか、これらを検証しながら、例えば戦後の「前衛音楽」と同会議体の政治哲学との間の関係性などを、より詳細に考察していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
夏季にはバーゼルのパウル・ザッハー財団での一次資料の検証を計画している。また冬季には、ニューヨーク大学附属図書館所蔵の、「知的自由のための会議」に関する資料を検証する。それと並行して、既刊の資料や著書を通じて、上記の問題の検証を続ける(例えば、アドルノールカーチの「アンガージュマン芸術」論争が当時の西ヨーロッパの前衛音楽を背景にどのように文脈付けされ得るか、など)。
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