研究課題
今年度はまず、これまで行ってきた資料調査・研究への補足的資料調査として、米国ワシントンの国立公文書館および議会図書館、およびニューヨーク市立図書館パフォーミング・アーツ研究部門において、前者では、パリに本部を置きながらも米国中央情報局による資金提供を受けていた反共非政治活動体「文化的自由のための会議」関連の資料(とりわけ同会議体が主催した音楽祭に関連する資料)、および同会議体が自身の活動上ひとつの対立項として捉えていた米国作曲家アーロン・コープランドの冷戦期の活動に関する一次資料を調査した。後者では上記の「文化的自由のための会議」による活動と同時期、米国文化播種の目的で米国国務省が行っていた一連の講演プログラムにて中心的役割を担った、米国作曲家ルー・ハリソンに関する資料を調査した。またこれらと並行し、冷戦初期(~1970年代)における日本の音楽創作界において、「米国流民主主義」が日本においてどのように理解され、受容されていたのかを戦後米国前衛音楽の受容を通じて考察する目的で、60年代~70年代にかけての「草月アートセンター」における音楽関係イヴェントに関する資料調査も行った。これらの調査から見えてくるものは、戦後の音楽創作界における「共産主義」思想に対する理解(あるいは共感や嫌悪感)が都合よくその表象を変え、あるいはリベラリズムの新たな定義を創りだしてきた、という見解である。今年度は成果発表として英語論文2本を刊行した他、10月にはこれまでの研究成果を台湾・台北にて行われてた国際音楽学会東アジア支部大会にて発表した。
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