本研究は、米国中央情報局から秘密裏に資金提供を受けていた多国籍団体「文化的自由のための会議」の音楽関連活動を通じ、冷戦期における西側の「インテレクチュアル」が、共産主義の「危機」をいかにして定義し、あるいはそれに肯定的・否定的に向き合ったのかを探ることで、クラシック音楽の創作と受容のプロセスが政治からどのような方向付けを受け、あるいはその文脈付けに加担したのかを検証するものである。様々な一次・二次資料の調査・研究を通じて、戦後西側諸国の音楽家たちが、「共産主義」や米国式「民主主義」を自在に、時には恣意的に解釈することで、自身の音楽観における「自由」を担保してきたことが明らかになった。
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