研究課題/領域番号 |
23520161
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
野川 美穂子 東京芸術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
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キーワード | 日本音楽 / 地歌 / 浄瑠璃 / 旋律型 / 歌舞伎 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、以下の調査と研究を行った。①地歌の「浄瑠璃物」(半太夫物と繁太夫物)に関する文献資料の収集と調査、②地歌の「浄瑠璃物」の伝承者の芸談の整理、③地歌の「浄瑠璃物」の原曲に関する歌舞伎と人形浄瑠璃の上演情報の収集、④地歌の繁太夫物の音楽的特徴の分析。 このうち①については、従来に紹介されていない『三弦独譜』(『五線録』の異本)と『琴曲松の莩』(天明2)を発見し、その内容の解読と調査にとりかかった。②については、雑誌『三曲』から、大正から昭和初期にかけての口伝情報を整理した。③については、大阪府立中之島図書館所蔵の芝居番付から、繁太夫物の原曲につながる可能性をもつ、豊後系浄瑠璃を用いた歌舞伎の上演情報を抽出した。④については、昨年度の研究発表「地歌の繁太夫物の旋律型について」(2012年1月29日、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター)に基づき、さらに音楽的な分析を加えた論文の執筆にとりかかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地歌と地歌以外の三味線音楽との楽曲交流を研究するために、平成24年度には次の5点を研究計画とした。1.地歌の「浄瑠璃物」に関する地歌の文献資料(歌本・譜本類)の収集と調査、2.地歌の「浄瑠璃物」の原曲に関する歌舞伎と浄瑠璃の文献資料の収集と調査、3.地歌側の資料と歌舞伎・浄瑠璃側の資料の照合、4.地歌の「浄瑠璃物」を伝承する専門家への聞き取り調査、5.地歌の「浄瑠璃物」の音楽様式の分析。このうち1.2.5は、計画通り進めることができた。とくに、1については、新たな資料を発見し、その調査を行うことができた。3は2に基づく作業であるが、2の作業を優先して進めることとし、来年度の課題に見送った。5については、音楽様式の分析方法を進めるいっぽうで、分析に必要な音源整理(SP/LPレコードなど)も行った。
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今後の研究の推進方策 |
1.地歌の「浄瑠璃物」に関する地歌の文献資料(歌本・譜本類)の収集と調査、2.地歌の「浄瑠璃物」の原曲に関する歌舞伎と浄瑠璃の文献資料の収集と調査、3.地歌側の資料と歌舞伎・浄瑠璃側の資料の照合、4.地歌の「浄瑠璃物」の音楽様式の分析、を行い、研究成果に基づく論文を完成させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、①「浄瑠璃物」に関する文献資料の収集、②「浄瑠璃物」の音源資料の収集、に研究費を用いる。このうち①には、「浄瑠璃物」の分類を採用する地歌の江戸期の文献資料(歌本、譜本)、および、「浄瑠璃物」の原曲の解明につながる歌舞伎と浄瑠璃の文献資料(芝居番付)を、マイクロフィルムから複写する費用、地方の図書館に所蔵される文献資料を直接に実見するための旅費が含まれる。②には、SP/LPレコードの音源のCD化を業務委託する人権費が含まれる。
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