上方で発展した三味線音楽である地歌のレパートリーには、盲人音楽家によって作られた楽曲に加え、歌舞伎や人形芝居の音楽、遊里の座興の音楽など、地歌以外の三味線音楽から摂取した楽曲が多く含まれている。本研究では、そうした楽曲のうち、繁太夫物(18世紀前半に大坂で活躍した豊美繁太夫の繁太夫節に関連する地歌の楽曲)に焦点をあて、関連する文献資料と音源資料の収集と整理を行った。さらに、その資料をもとに、繁太夫物成立の経緯を推察し、繁太夫物の音楽的特徴を分析するためのモデルを提示した。また、中世から近世初期の流行歌謡を引用する地歌の長歌物などに対する分析、関連する新出資料の歌本・譜本の研究も行った。
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