研究課題/領域番号 |
23520164
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 庸子 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (00273201)
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キーワード | ゴードン・クレイグ / 演劇史 / 舞踊史 / 人形劇 / モダニズム / 身体文化 / 身体史 / 芸術史 |
研究概要 |
24年度の予定は、Rood (ed.): Gordon Craig on Movement and Danceの論考及び関連する研究文献を検討し、「超マリオネット」の構想を共時的な身体文化との関連で考察することであった。この関連で、引き続き、クレイグ、シュレンマー、人形劇等に関する文献やDVDを収集した。また当初予定していた日本近代文学館以外に、国立国会図書館でも調査を行い、貴重な文献を入手することができた。大阪大谷大学の「ゴードン・クレイグ・コレクション」は、時間の関係で直接調査することができなかったが、図書館を通じて幾つかの貴重な資料を入手した。資料館の調査は、今年度中にもう一度行う予定である。 各資料の調査結果から、「超マリオネット」の構想が胚胎したのは、クレイグのドイツ語圏滞在の時期であり、そこにハリー・ケスラー伯を中心とした芸術家のネットワークが深く関わっていることがわかってきた。ケスラー伯は、クレイグの構想を、モダンダンスの創始者のロイ・フラーや川上貞奴による舞台の革新の延長上に捉えており、演劇改革と舞踊革命のいわばミッシングリングが明らかになりつつある。 もう一つの極めて重要な発見は、この「超マリオネット」の構想に、日本文化が意外なほど深く関わっていると思われることである。この点に関しては、フランス国立図書館と連絡を取りつつ、現在資料収集に努めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果発表はまだないが、当初の計画より最初の二年間に集中して資料調査と文献の読解を行う予定にしている。 今年度の非常に大きな成果としては、同時代の身体文化との関連が具体的に明らかになりつつあること、また、フランス国立図書館に日本文化の大きな影響を示す資料が存在することを発見したことであり、今後、新しい視点からの研究が期待できる。 また24年度は、23年度に行ったモダニズム演劇における人形的身体についての調査結果を整理し、原稿の形で書き下ろした。また、24年度の調査結果についても、別の論文としてまとめつつある。今後の調査結果を踏まえて改稿し、25年度中に学会誌に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の重点は三つある。 1)今年度は、クレイグと人形劇についての関連を調査することであり、まず同時代における「人形劇ルネサンス」の概要を記述した上で、クレイグの「超マリオネット」の構想を、ドイツ語圏モダニズムにおける抽象人形劇の系譜として辿ってみたい。 2)また先述のようにフランス国立図書館に、「超マリオネット」の関連資料が存在すること、それが人形劇と関連を持つと思われることが分かった。資料は大量で、しかもその大半は手書きのメモであると思われるので、すべてを分析することはできないが、まず資料を入手し、どのような内容であるのかを確認したい。 3)今年度は成果発表の年度と位置付けているので、調査結果について、複数の学会誌に投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
身体文化・人形劇関連の資料収集に3万円、フランス国立図書館等の資料の複写費に15万円、大阪大谷大学「ゴードン・クレイグ・コレクション」(富田林市)の資料調査に2万円を要する。
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