研究課題/領域番号 |
23520167
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
上田 文 京都工芸繊維大学, 文化遺産教育研究センター, 特任助教 (30600291)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 近代日本美術 / 京都の日本画 / 土田麥僊 |
研究概要 |
1)韓国国立中央博物館調査(土田麥僊筆「妓生の家」(未完成)・同(下絵)、および陳鑑如筆「李斎賢像」など)。麥僊の絶筆である「妓生の家」は、これまで容易に調査できなかったもので、この度、未完成作とその下絵について詳細な調査を行えたことは有り難い機会であった。また韓国の研究者と作品についての意見交換を行い、国外からの視点を学び非常に有意義であった。「李斎賢像」は麥僊が注目した作品であり、韓国の美術史でも重要な作品であることを改めて確認した。2)ボストン美術館調査(土田麥僊筆「歌妓図」(下絵)および京都画壇の作品)。麥僊の最晩年の「歌妓図」(下絵)は、下絵の存在がこれまで日本では知られていなかった資料であり、当研究課題において非常に重要な成果である。本画を見ることのできない現在、最晩年に舞妓図がどのように変化したのかを知ることのできる資料として、本下絵(草稿)の存在は麥僊研究において大変貴重である。3)メトロポリタン美術館調査(近世近代の京都画壇の作品)。日本でほとんど残されていない幕末から明治にかけての京都画壇の作品群を調査することができた。その中に麥僊の最初の師である鈴木松年の「蛍図」が含まれている。この作品は日本で知られている作者像とは異なる側面を示す作品で、鈴木松年に対する新知見を得ることができた。4)日本国内の麥僊下絵・素描類および同時代作家の下絵調査(大和文華館所蔵の土田麥僊筆「燕子花」(草稿)、京都国立近代美術館所蔵の土田麥僊「妓生の家」素描類、東本願寺所蔵の竹内栖鳳「天女舞楽図草稿」、京都市美術館所蔵の竹内栖鳳「散華」(下絵類)・同「アレ夕立に」(下絵)・土田麥僊「明粧」(下絵)・小林古徑「極楽井」(下絵)など)。いずれも麥僊の人物画の特異性と京都画壇における位置を考察する上で重要かつ必要な作品および資料類である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では次年度に予定していた韓国(ソウル国立中央博物館)とアメリカ(ボストン美術館、メトロポリタン美術館)での調査を初年度に順調に進めることができたため、当初の計画以上に進展している、と評価した。特にボストン美術館所蔵「歌妓図」(下絵)は本研究課題の特に重要な作品であり、実際に調査できた意義は大きい。また韓国では韓国国立中央博物館所蔵「妓生の家」について韓国の美術研究者と意見交換を行う機会を得、国際的な視点で作品について考察できたことは、予定外の収穫であった。その他、近隣の麥僊作品の下絵や素描類および同時代作家の下絵などの調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
国内での資料調査の充実を図る。本年度は特に麥僊の郷里である新潟、佐渡方面の作品資料を調査、探索することに重点をおきたい。また麥僊と同時代の他の人物画についても視野を広げる必要がある。その他、国外の麥僊作品についてもさらに情報を収集できればと考えている。また当時の新聞・雑誌など二次資料についてもできるだけ調査を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
新潟、佐渡方面、その他の作品調査の旅費。国外の情報収集のための費用。新聞、雑誌などの調査費用。その他、参考文献の購入、調査に必要な物品の購入、作品データ紙焼き費用、などを予定している。
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