近代京都で活躍した日本画家、土田麥僊の人物画についての研究である。麥僊は人物画の中でも特に舞妓図を得意としたが、「美人画家」には分類されてこなかった。それはなぜか。本研究では肖像性と象徴性という観点から作品の分析を行った。写生を重視した麥僊の人物画からは、明らかにモデルの特徴が読み取れる一方、麥僊の残した記述からは麥僊が平安時代の仏画に注目し、信仰と優美の一致を目指していたことが明らかになった。舞妓と仏画という隔たりの大きい画題を融合させようとしたところに麥僊の特異性があったと結論づけた。これは京都画壇においても特異な位置を占めている。
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