研究課題/領域番号 |
23520170
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
北川 純子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (00379322)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 浪曲 / 三味線 / 即興性 / 文化変容 |
研究概要 |
今年度行った研究内容および、そこから導出された知見は以下の通りである。 1.1930年代までに録音された浪曲の音盤を収集し、それらについて、三味線の「手」(旋律型)の聴きとりによる分析と、一部は採譜による分析を行い、現在伝承されている「手」との比較を行った。その結果、浪曲の二大様式のうち「関東節」では、1930年代までに、現在伝承されている「手」と相同の旋律型、すなわち「狭義の関東節」の「手」が形成されていると考えられるのに対して、「関西節」では1930年代までにはまだ、現在伝承されている「手」、すなわち「ウレイ節」「浮かれ節」といった各種の「節」に対応する三味線の旋律型が確立されていない可能性があることが浮かび上がった。 2.楽屋裏を含めた複数の場で、複数の浪曲師および曲師の方に、浪曲三味線の「手」についての教授をお願いし、得られた情報を整理した。その結果、一点目に、個々の曲師によって、同一種類の「節」に対応する「手」にちがいがあること、二点目に、当該曲師が誰に三味線の「手」を教わったかという、いわば教授の個人ルートによって「手」が異なると考えられること(既存の三味線音楽を引用するという、定型性が強く働くはずの「手」に関しても、そうした例が見られたことは特に重要である)、三点目に、どのように「手」を変形させてよいかという程度と内容、また口演のたびに異なる「手」を弾くことに対する認容度が、個々の浪曲師によって異なると考えられること、が浮かびあがった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「浪曲三味線の【手】が史的展開過程においてがどのように形成され、変容しているのかを探る」という研究目的に関して、今年度の計画として掲げた(1)1930年代までの録音資料の分析、(2)楽屋裏を含めたフィールドワーク、の二種の作業を実施し、浪曲三味線の「手」が、当初から、現在伝承されているような「手」であったわけではないとの知見が今後の研究方向への手がかりとして得られたことから、今年度の研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
浪曲三味線の「手」が、当初から、現在伝承されている「手」と相同であったわけではない、という知見は今年度得られたが、ではいつごろ、どのように、という問題を、今後、1930年代以降の録音物の分析から導き出してゆくとともに、他方で、現在の演者と奏者の価値意識をフィールドワークからさらに描き出し、浪曲三味線の変容過程とそこに働いた力を探ってゆく方向ですすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1930年代以降第二次世界大戦後あたりまでの録音物の収集、フィールドワーク旅費、ならびにフィールドワークに必要な消耗品に使用する。
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